WEB制作業の決算書・経営上の弱点について思う事
当社のようなWEB制作業の会社の場合、B/Sの縦幅:総資産は小さくなるような形になります。
出来る限り固定資産は持たない方が良い、B/Sの縦幅はWEB制作業らしく狭く落ち着くべき、持たざる経営(:という字面に対しての誤解があった)だと創業からこれまで考えていました。ただ最近、その考え方もどうなのかな?と、少し自分の考えを改めている部分が有ります。
会社の財務にとって大事なのは潤沢な現預金を持つ事と純資産の積み重ねであり、それならば現預金が溜まるスピードと純資産が積み重なっていく構造が有ればB/Sの縦幅についてはある意味関係が無いのではないか、と思えるからです。上場企業ではないので、総資産利益率を意識しないといけない、等という度合いは少ないと思っています。
人がすべてのWEB制作業を確固たる会社に仕上げるには人が成長していく仕組みが不可欠です。
私は会社をはじめ1人で創業したので思いっきり個人に頼ってきた経験があり、人が成長する「仕組み」の構築に乗り出すにはとても時間がかかってしまいました。過去の自分に対して抗って強固な会社を目指していかなければならない時期を迎え、自分の現場の職方的仕事のやり方のかなりの部分を捨て去る必要があります。
そんな中で中小・零細企業はどこまで行っても個人の力量に頼っている側面もあると思います。会社は仕組化しないと脆弱であると人が増える中で考えが進む一方で、個人が強みになり競合優位性になったりするから、話はとてもやっかいです。仕組化しすぎる事により弱くなってしまう事や、仕組み仕組み言っていると、競合他社と同列になってしまう要素があります。
現在の当社には人を育てる仕組みは必要で、今期はその部分を特に強化しています。その事と並行するようにWEB制作業に共通して言える会社経営的な弱点を見る事も大事だと思っています。まず、BtoB取引だから相手がいる中で「収益モデル:社員の仕事の提供」の一手だけでは会社全体としての生産性獲得については、そもそもとして難易度が高いことを理解しておくべきかと思います。その上で顧客の絞り込み・マーケットの明確な選択、勝てる営業リソースの配分、サービスの強みと捨てる要素の設計、毎日の改善が必要です。
そして財務戦略として、現在は借り入れをして事業に投資をする事が有利としか思えない環境に僕の目には見えるのですが、固定資産を持たないので何も考えていないと資金使途を作りづらいのと、減価償却で現預金を残すような構造が作りづらいという点もあります。
IT業界でもSaaSを扱う企業と、当社のようなWEB制作業では明らかに異なる部分も有ると思います。SaaS企業にとっての市場販売用プロダクトは固定資産になるので、人以外の部分が稼いでくれる要素もあります。当社のWEB制作業のような会社はそういったツールを持たないので人を育てる仕組み・付加価値を提供する仕組み・社員の仕事品質が必須です。そう考えるとIT企業の中でも労働集約型側面は大きく、組織にするようであればこの部分についての弱みも理解しておく必要があります。
もちろん、本業の制作業が強ければそれで問題はないのですが、営業利益を生む日々のWEB制作業としての付加価値活動を改善すると共に、そこに組み合わせて人以外の部分への投資を組み合わせてキャッシュフローを強化する視点も大事なのではないか、と最近思っています。
持つ経営と持たざる経営という言葉が有りますが、この言葉の中に入っている要素をより分解して考えておく必要があります。
目の前の状況を色々考えるとIT企業だからといって、一概に答えは何が正解かは言えず、その会社ごとに独自のその時の状況次第と思います。常に偏見を持たずに進む必要があります。