建築業界の新たな常識「BIM」をわかりやすく解説|メリット・デメリットやCADとの違い
建築・建設業界においてもDX化が進んでおり、その一環として国土交通省が推し進めているのが「BIM」の普及です。
しかし、まだまだ住宅業界など中小規模の現場にまで普及していない現状があります。
「BIMは聞いたことがあるが、使うイメージが浮かばない」「BIMを導入したいがどこから始めればいいかわからない」という方も多いはずです。
そこで、今回は「BIM」の概略やメリット・デメリット、3D CADとの違い、導入する上でおすすめのサービスを紹介します。
設計・施工・現場管理の効率化や新たな販路開拓を進めたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
BIMとは|概要と活用方法
BIMとは、ビルディング・インフォメーション・モデリング(Building Information Modeling)の略称です。
既に大規模ブロジェクトを中心に導入が進んでおり、国土交通省は当初の2025年から前倒しで2023年より小規模工事以外の全ての公共事業にBIMを原則適用することを決定しました。(参考:国土交通省|建築BIM加速化事業について)
設計(構造・設備・意匠)から積算(数量拾い・予算管理)、工程管理、引き渡し後のメンテナンス履歴など、建物のライフサイクルに関する情報を関係業者がそれぞれ積み上げて一つのデータベースにまとめられます。
BIMを活用したプロジェクトの流れは以下の通りです。
【発注者】BIM EIRの作成
EIRとは発注者情報要件(Employer's Information Requirements)の略称で、主に公共事業や大規模プロジェクトなど入札を伴う場合に入札参加者へ提示されます。
- ・BIMモデルに必要な情報リスト(詳細度)
- ・運用方法に関する要望
- ・契約条件
- ・その他、発注者からの要望
【受注者】BEPの作成
BEPとはBIM実行計画書(BIM Execution Plan)の略称で、発注者から提示されたEIRを基に、受注者が作成します。
- ・BIM活用の目的
- ・受注者・発注者その他関係各社の役割分担
- ・システムの概要要件
【受注者】BIMモデルのデータ構築
BEPの内容を発注者・受注者間で協議した後に、実際に運用されるBIMデータを作成します。
(参考:国土交通省|BIM実行計画(EIR/BEP)の目的)
国土交通省ガンドライン
建築・建設業界のDX化(※)を進めるために、国土交通省は「官庁営繕事業におけるBIMモデルの作成及び利用に関するガイドライン」(令和6年改訂)を作成しました。
※DX化:デジタル・トランスフォーメーション(Digital Transformation)の略称で、社会基盤を支えるサービスなどをデジタル化することで、業務の効率化を図る取り組み。国土交通省ではインフラDXを実施している。
これに伴って2023年4月から公共事業(直轄事業)は原則BIM/CIMの適用が求められます。
CIMとの違い
国土交通省ではBIMを2018年より「BIM/CIM」と表記しています。
BIMは建築分野でのシステムを指すのに対して、CIMはコントラクション・インフォメーション・モデリング(Construction Information Modeling)の略称で土木分野のツールです。
根本的な概念はBIMと同様ですが、CIMは主に橋やダム、道路、ガス・水道などのインフラ設備の計画に使用されます。
海外ではBIMとCIMを区別せずに、BIMの名称で統一するのが一般的です。
3D CADとの違い
BIMは設計プランを3Dモデル化できるため3D CADと混同されがちですが、それぞれの機能には大きな違いがあります。
システム | 特徴 |
---|---|
3D CAD | ・コンピューターを用いる設計製図システム ・各種図面と3D画像(パース)は連携するが、設備図・意匠図や数量の拾い出しまでは連携しない ・計画を視覚的に確認するためのツール ▶︎図面作成やプランの整合性、ビジュアルを確認するツール |
BIM | ・コンピューターを用いる設計製図からプロジェクト全体のデータベースまでの役割を持つシステム ・各種図面から3D画像(パース)、設備図・意匠図や数量の拾い出しまで連携している ・ソフト上でオブジェクトを積み上げられて設計でき、建材の視覚的なデータだけではなく素材やコスト、施工方法などCAD図面には現れない情報も構築される ▶︎図面作成やプランの整合性、ビジュアルを確認でき、同時に施工管理・コスト管理まで網羅できるツール |
業務をCADからBIMへ移行する際、データを作り替えなくてはいけないと思っている方もいらっしゃるかもしれません。
確かに今使用しているCADソフトによっては、BIMとのデータ互換がうまくいかない可能性があり、BIMソフトによっては「macもしくはWindowsでしか使えない」などOSを限定するものも少なくありません。
ただし、設計事務所や工務店で多く使われるAuto CADは同社で製造するRevitへ互換しやすく、主にデザイン系事務所で使われるVector WorksもBIM機能を持つシリーズがあります。
BIMを導入するメリット
既に公共事業を請け負う大手ゼネコンだけではなく、中小規模の建築会社でもBIMを業務へ取り入れているところは少なくありません。
BIMを導入する主なメリットは以下の通りです。
- ・プランをデータベース化できて、業務(設計・施工・現場管理)や建物運用の効率化を高められる
- ・設計の初期段階から建材の数量拾い出しを自動化できるため、コストや工程を含めたプランの検討が可能になる
- ・図面情報(基本設計図・構造図・設備図・施工図・意匠図など)がすべて3Dモデルに紐づくため、修正内容が一斉に更新されてヒューマンエラーを防げる
- ・BIMモデルに建物情報を集約できて、設計者・施工者・発注者・建物運用者が同じデータを閲覧するため、業者間のコミュニケーションがスムーズになり、誤解や思い違いを防げる
- ・環境負荷や省エネ性能の検討もできるため、サステナブル建築にかかる手間を削減できる
- ・運用段階においても使用した建材の情報を簡単に確認できるため、無駄のない効果的なメンテナンス計画を立てられる
- ・小規模プロジェクトや住宅分野でも、BIMを導入すると他社と差別化できて顧客満足度が上がる
つまり、設計者・施工者だけではなく、発注者・建物運用者にとってもBIM導入は必要ということです。
BIMのデメリットと課題|普及しないと言われる理由
BIMには業務面・コスト面・運用面においてメリットがある反面、日本国内での運用事例は公共事業や大規模プロジェクトが中心です。
国土交通省の実施したアンケートでは、BIMを導入しない理由として以下の点が挙げられています。
- 「発注者や協力会社等、業務上の関係者からBIM活用を求められていないため」
- 「CAD等で現状問題なく業務を行うことができているため」
- 「業務をBIMに切り替えた場合、習熟するまで業務負担が大きいため」
- 「BIMを活用する人材がいないため、又は人材育成・雇用に費用がかかるため」
- 「BIMを導入し、業務を行うためには何から始めればよいかわからないため」
(引用:国土交通省|建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査 確定値<詳細>)
BIMへこのような印象を持つ業界関係者が多い理由は、デメリットや現状の問題点にあります。
- ・導入コストが高い(ソフトウェア導入費用・情報管理やセキュリティシステムの構築)
- ・実務レベルで操作できるようになるための人材教育や育成(BIMマネージャーの人材不足や教育コスト)
- ・BIMの認知度が高まらないことによる業界全体でのニーズの低さ
- ・BIMの既製モデルを寄せ集めると決まった設計しかできず、自由なプランニングが難しい(技術習得まで時間がかかる)
建築BIM加速化事業による補助金が支給されるものの、短期間で設計・施工を行う必要のある中小規模のプロジェクトや住宅分野へはまだまだBIMは浸透していないのが実情です。
BIM/CIMの未経験者でも対応できるレベルに仕様を下げている現状も見られ、問題視されています。
また、初期コストや教育にかかる期間が懸念され、現場との両立が難しく切り替えのタイミングを決断できない会社も少なくありません。
「日々の忙しさからなかなかBIMへ手をつけられない」「BIMの必要性は感じているが、何から始めればいいか分からない」という企業様は、まず専門家へ「データのBIM化」を外注する方法がおすすめです。
設計データのBIM化をプロに外注する方法も
BIMが普及しない原因は「導入コストの高さ」と「技術習得までの時間と手間」にあります。
普及が進まないことで建築・建設業界のニーズが高まらず、より一層BIMが浸透しないのが現状です。
そのような状況だからこそ、他社よりも早くBIMの導入を進めることで、受注獲得や販路拡大の可能性を期待できます。
BIM化のハードルであるコストと技術習得は、プロへ外注することで解決しましょう。
木造建築における「BIMによる業務の効率化」「3Dパースを使った効果的なプレゼン」「プレカットCADデータのBIM化」に興味がある方は、MAKE HOUSEをご利用ください。
まとめ
社会全体のDX化が進む中、これまでマンパワーに依存してきた建築・建設業界も決して例外ではありません。
BIMで業務の効率化や生産性を上げることで、業界全体の持続可能性が高まります。
木造建築や住宅分野にまでBIMが普及していない今だからこそ、ビジネスチャンス獲得に向けてBIMの導入をぜひご検討ください。
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