第三次ウッドショックとは?原因から今後建築にもたらす影響まで詳しく解説
2021年から新聞やテレビなどマスコミで取り上げられ始めた“ウッドショック”ですが、実は今まで何度か発生しているって知っていましたか?
今問題視されているのは、“第三次ウッドショック”です。
では、そもそも何が原因で今後はどのような影響を及ぼすのでしょうか?
今回は、第三次ウッドショックに至るまでの経緯や世界諸国の動き、今後の動きについて詳しく解説します。
目次
■ 第三次ウッドショックはコロナが原因?第一次・第二次はいつ?
■ 第三次ウッドショックが建築業界にもたらした影響は?
■ アメリカ・中国の動きは?ロシア・ウクライナ情勢の関係性は?
■ 一体いつまで続く?2022年で収束する?
目次
■ 第三次ウッドショックはコロナが原因?第一次・第二次はいつ?
そもそも、ウッドショックとは諸要因によって世界的に木材の価格が高騰する現象を指します。
2021年に問題となったのは、実は“第三次ウッドショック”と言われており、それまで第一次・第二次と大規模な価格高騰が起きています。
では、なぜ何度もウッドショックが引き起こったのでしょうか?
それぞれの原因と経緯を時系列で紹介します。
1990年
アメリカで絶滅危惧種に指定されたマダラフクロウの保護を目的に、国有林の天然林伐採が規制され、国内有数の林業州であるオレゴン州・ワシントン州の州有林丸太輸出が制限始めました。
これによって、アメリカ国内だけではなく世界中で丸太供給量と需要量のバランスが崩れて、価格が高騰してしまいました。
1992~1993年頃
〈第一次ウッドショック〉
1992年になると、マレーシア・サバ州が丸太輸出禁止政策をとり、さらなる価格高騰につながりました。
日本国内では、価格高騰した米ツガ材の代わりに国産杉材への代替えも検討されましたが、木材の人工乾燥の設備が不十分だったため、結局ヨーロッパ産の集成材に頼らざるを得ませんでした。
これは日本だけに限ったことではなく、世界各所で同じようなことが起こり、より木材の価格が急騰してしまったのです。
2006年頃
〈第二次ウッドショック〉
インドネシアの大統領令によって、違法伐採や違法輸出に対する取り締まりが強化され、日本に入ってくる合板輸入量も大幅に減少してしまいました。
また、世界有数の製材大国であるロシアが、針葉樹丸太への輸出関税を引き上げ、世界の需要が一気に北米産へ集まったことで、結果的に世界的な丸太価格急騰をもたらしたのです。
この頃から、日本でも「輸入材依存からの脱却」と「国産材利用への切り替え」が検討され始めました。
2021年〜
〈第三次ウッドショック〉
日本で国産木材の利用促進が少しずつ進み始めていた中、新型コロナウイルス感染のパンデミックが発生しました。
世界的感染拡大による経済的不安から建築需要が一時停滞したものの、アメリカや中国ではすぐに経済回復し、さらに世界的な“STAY AT HOME(ステイ・アット・ホーム)”で住宅の改築・新築を検討する人が増え、住宅需要が急増しました。
しかし、林業や木材加工工場の稼働率低下や、需要集中による運搬コンテナ不足、物流ルートの停滞・縮小によって、木材の納期遅延・価格高騰がどんどん深刻化していったのです。
このように、新型コロナウイルス感染拡大を皮切りに、今まで何度か高騰していた木材価格が、ついに爆発的に急騰してしまったのです。
同時期に発生したカナダでの深刻的な森林虫害や森林火災も相まって、世界的に木材価格は今まで推移していなかったレベルまで上がっているのが現状です。
既に第三次ウッドショックが問題視されてから2年近く経つ現在でも、まだまだショック以前の価格に戻るまでには時間がかかると予想されており、輸入材の価格高騰に伴って日本国産材の値上がりも続いています。
■ 第三次ウッドショックが建築業界にもたらした影響は?
第三次ウッドショックは、日本の建築業界にも多大なる影響を及ぼしました。
では、主な影響についてそれぞれ解説します。
建築資材の高騰に伴う建設費・住宅価格の高騰
木材の価格高騰は必然的に建築製材の値段へも影響します。
実際に、日本国内で流通している製材価格は、ウッドショック前の1.5倍に迫るところまで上昇してしました。
それによって、総建設費や住宅販売価格も値上がりし、国民の生活に直結する事態にまで発展してしまったのです。
深刻な納期遅延・建設現場停滞
ウッドショックが発生してから、限られた木材を経済活動が活発なアメリカや中国が取り合うように買い占める動きが始まりました。
そこに、新型コロナ感染拡大による深刻な人員不足も相まって、納期遅延が偶発的に起こったのです。
それによって、建設現場でも計画の延期や中止が相次ぎ、さらには経済鈍化による“建て控え”も進んでしまい、日本でも建設業界に大きな打撃を与えました。
これは中小規模の工務店や設計事務所に限ったことではなく、いわゆるスーパーゼネコンと呼ばれる4社でも、売上高は増収見込みではあるものの、2022年年度は大幅な減益が予想されています。
国産材利用の促進
第三次ウッドショックが建築業界にもたらした影響は、決して楽観視できませんが、希望の持てる変化ももたらしてくれました。
それが、「国産材利用の促進」です。
1950年の木材自給率90%以降、日本の林業・製材業は衰退の一途を辿ってきていました。(農林水産省「木材需給表」を参照)
その原因は、ずばり安価な輸入材への依存です。
しかし、この度のウッドショックによって、輸入材へ依存しずぎることへのリスクを政府も国民を実感し、2021年には、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律(平成22年制定)」を「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」と改める法案が国会を通過し、対象を公共建築物から一般建築物にまで拡大させました。
近年盛んなSDGsや脱炭素化の動きとも相まって、今や国産材・地産材の利用は国内でも大きな潮流となっています。
しかし、国内林業従事者の高齢化や労働不足などの構造的な問題点は解決できておらず、すぐに輸入材を国産材に切り替えることは難しいのが現状です。
■ アメリカ・中国の動きは?ロシア・ウクライナ情勢の関係性は?
今回のウッドショックで分かった通り、建築業界は世界各国の動向や情勢の影響を大きく受けます。
では、2022年時点で世界経済の中心であるアメリカ・中国の動きはどのようになっているのでしょうか?
また、ロシア・ウクライナ情勢がもたらす影響はあるのでしょうか?
中国の建築事情
中国は、2021年から「ゼロコロナ政策」を継続しているものの、感染者が増加して2022年には経済の中心都市でもある上海にて行動制限を行いました。
それによって、個人消費が激減し、GDPが急降下するなど経済不安が広がりました。
しかし、木材輸入量は一時的に激減したものの、2022年下半期に入ると小売業や工業生産業、建築業などが徐々に回復し始めています。
今後、中国政府はさらなる施策を実行すると発表しており、景気はさらに持ち直す見込みです。
そのため、価格が戻りきっていない丸太などについては、再び中国の買い占めがあれば再高騰する可能性は否めません。
政府は、景気回復を目的に、乗用車取得税の減税や地域商品券の配布など消費刺激策を実施。先送りされた需要の顕在化に加えて、これらの政策効果により個人消費は持ち直していく見通し。政府は、地方債発行の前倒しや金融債の追加発行などにより、インフラ投資の支援策を強化。インフラ投資を中心に固定資産投資も回復へ。景気は内需主導で持ち直していく見通し。
引用:株式会社 日本総合研究所|中国経済展望2022年8月
世界の木材価格を大きく左右する中国の経済や建築については、今後も引き続き注目していかなければいけません。
アメリカの建築事情
アメリカ経済は、長期化する物価高騰や米連邦準備制度理事会(FRB)による急速な金利引き上げによって、後退傾向にあると言われています。
米ウォールストリート・ジャーナル紙の最新の調査によると、エコノミストらは向こう1年の間に米国が景気後退に陥る確率を44%にまで引き上げた。これは、通常であれば景気後退入り直前、あるいは景気後退期間中の調査で得られる数値である。1月の調査ではその確率は18%、4月調査では28%だった。
引用元:NRI|米国景気後退の確率予想は44%まで上昇
金融引き締めの動きもありアメリカ国内の住宅投資は鈍化し、一時の新築受注件数よりはだいぶ減少しています。
しかし、これは一時的なものと認識する専門家も多いため、再び住宅需要の拡大も予想されます。
ロシア・ウクライナ情勢との関連性
ロシアは世界トップの木材輸出大国ですが、2022年現在、日本を含めた「非友好国」に対して、一部木材の輸出禁止措置を発表しています。
建築に主に関わる製材は対象外となっており、その影響は少ないと言われており、日本政府もこの一連の措置でもたらされる影響は少ないと発表しています。
・チップは、輸入量合計(1,100 万トン)の1%程度。
・丸太は、本年1月から、ロシアが輸出禁止を導入済み。
・単板は、輸入量(29.4 万 立方メートル)の 82%を占めるが、国内で流通する合板の原料全体に対しては2%程度。
引用:林野庁|ロシアによる「非友好国」への単板等の輸出禁止
しかし、ロシアから輸入した丸太が原材料の突板フローリングなど一部の内装材は、現時点で既に値上がりしているものもあります。
また、今後の情勢変化によって、輸出規制対象が製材にまで拡大される可能性もゼロではありません。
これからもロシア政府による決定には注目していかなくてはならず、日本政府も林野庁を中心に、さらなる国産材利用促進を地方自治体と進めています。
■ 一体いつまで続く?2022年で収束する?
ロシア・ウクライナ情勢がまだまだ終息しないこともあって、合板と丸太の価格は上昇を続けています。
しかし、急騰していた製材と集成材は2021年12月を最後にピークアウトしたと見られており、価格は徐々に下降し始めています。
ただし、未だ油断できる状況ではありません。
ロシアから輸出規制を受けている丸太と合板については、緩やかではあるもののその上昇は止まっていないのです。
つまり、2022年も引き続き第三次ウッドショックの余波は建築業界に影響を与え続けると予測できます。
また、木材以外の価格高騰や円安による影響で、引き続き当面の間は新築戸建住宅の取引を中心として需要が一定程度鈍化する可能性が伺えます。
■まとめ
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、日本の建築業界は2022年も引き続き“耐える”年となるでしょう。
しかし、そんな今だからこそマーケティングに注力し、「アフターウッドショック」に備えることが重要です。
日本経済はもちろん、ロシア・ウクライナ情勢などまだまだ不安な問題が続いていますが、同業他社と差をつけて受注拡大をしていくためにも、最新の情報に耳を傾け、ぜひWebマーケティングなどにも真剣に取り組んでみてください。
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