建築業界がSDGsに向けてできることは?企業の取り組みやアピール方法についても
様々なメディアで毎日のように取り上げているSDGsですが、ご自身が目標達成に向けて何ができるか漠然としている方も多いはずです。
特に、工務店や設計事務所などの中小企業にとっては、何から手をつけていいか分からないかもしれません。
しかし、「建築」は人間の生活を支える根本であり、できることはたくさんあります。
そこで、今回は建築業界がSDGsにおいて「できること」・「やるべきこと」についてや、その活動を世の中に発信する重要性についてお話しします。
目次
■ 知っているようで知らないSDGsの基礎知識
■ 建築業界がSDGsに貢献するには何ができる?取組事例は?
■ これからは自社のSDGs活動を発信することが重要課題
■ 自社の取り組みを発信する方法は?
目次
■ 知っているようで知らないSDGsの基礎知識
SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは、“持続可能な開発目標(英:Sustainable Development Goals)”の略で、世界全体で取り組むべきサスティナブル社会実現に向けての目標指針を示しています。
2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された,2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます。
引用:外務省|SDGsとは?
- 普遍性(先進国だけではなく、発展途上国も巻き込んで一致団結する)
- 包摂性(人間の安全保障理念を基本とし、「誰一人取り残さない」)
- 参画型(全ての利害関係者が役割を持つ)
- 統合性(社会・経済・環境全てで理念に取り組む)
- 透明性(定期的にフォローアップし、世界に向けて取り組みを発信する)
日本では、この5つのキーワードをコンセプトに、社会へSDGsへの貢献を「見える化」することを目的とした様々な取り組みが、国・地方自治体だけではなく多くの企業で実施されています。
つまり、国・大企業・中小企業・個人問わず、全員が前向きに参加して、その活動を世の中に発信していくことが求められているのです。
■ 建築業界がSDGsに貢献するには何ができる?取り組み事例は?
様々な業界でSDGs化が進んでいる中、特に「衣食住」に関わる分野については注目が高まっており、建築業界も決して例外ではありません。
それは、建物こそ私たち人間の生活を持続可能にする大きな要素だから。
日本では、日本建築学会が2020年4月に「SDGs対応推進特別調査委員会」を発足し、建築がSDGsに対してどのように貢献できるかの議論を進めています。
同団体が作成した資料によると、SDGs17の目標の中で日本人はどの項目についてもあまり緊急性を感じていないというアンケート結果が出ており、特に「まちづくり」や「生活環境」に対する意識関心が乏しいことが分かっています。(「日本建築学会 SDGs対応推進特別調査委員会|建築はどう持続可能な発展に貢献するのか?」参照)
では、具体的に建築業界はSDGs達成に向けてどのような行動をとるべきなのでしょうか?また、何ができるのでしょうか?
では、項目別に詳しく解説します。
1.貧困をなくそう
これは決して発展途上国に関したことだけではなく、賃金問題が常に付きまとう建築業界においても重要な課題です。適正な人事評価とそれに見合う適正な賃金の支払いが目標達成に寄与します。
2.飢餓をゼロに
貧困家庭の“食”をサポートする取組が進んでおり、建築業界でもこども食堂運営などの事例が増えています。
(例)
福岡県 おおのじょうこども食堂みずほまち
地元の建設会社が社員食堂や厨房、管理室を運営団体に貸し出しています。
3.すべての人に健康と福祉を
非正規雇用労働者も含めた関係者に健康診断を受けさせることで、年齢問わずすべての人の健康的な暮らしを確保できます。
4.質の高い教育をみんなに
社員への技術教育サポートや資格受験補助だけではなく、社会に向けて建築の魅力などを伝えるワークショップ開催もこの項目に該当します。
(例)
大和ハウス「こどもエコ・ワークショップ」
身近な「住まい」をテーマに、講習や実験、クラフトを通して環境問題について考えるきっかけを提供しています。
5.ジェンダー平等を実現しよう
男性の育児・介護休暇推進や、女性役員の積極的人事など、性別を問わず、プライベートと仕事を両立できる環境づくりを整えることで、ジェンダー問題解決に貢献できます。
6.安全な水とトイレを世界中に
建築現場によっては、非衛生的な仮設トイレが設置されているケースもありますが、生理現象の根幹である排泄環境を衛生的に保つことも重要です。適正な量を適正な位置に配置するように意識しなくてはいけません。
7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
太陽光発電や地熱利用などの再生可能エネルギーの推進や、現場・オフィスへの導入こそ、クリーンエネルギー化の貢献につながります。特に、大規模現場ではその効果は決して小さくありません。
8.働きがいも経済成長も
残業や休日出勤が当たり前になっている建築業界において、これからはディーセントワーク「働きがいのある人間らしい仕事」を意識した労働環境整備は急務です。性別や年齢に捉われず、誰でもスキルを活かして働ける社会だからこそ、初めて経済成長につながります。
(例)
株式会社LIXIL
労働組合と会社でコミュニケーションを図るための「労使協議会」を定期開催したり、在宅勤務やフレックス勤務、育児介護休暇推進などが選択しやすい雰囲気づくりに取り組んでいます。
9.産業の技術革新と基盤を作ろう
強固なインフラ整備に向けて、耐震技術の更なる開発や、土砂崩れ防止に向けた技術革新がこれに該当します。
10.人や国の不平等さをなくそう
建築業界の悪しき習慣である男性主体の風潮を払拭し、性別・年齢・学歴重視ではなくその人個人の適正やスキルを見極めて採用することで、不平等さや不合理さを払拭できます。
11.住み続けられるまちづくりを
人々が良好で快適な生活を送るための都市計画はもちろん、災害に強い住宅や省エネルギー住宅、パッシブハウスの設計施工も、持続可能な住環境実現に貢献できます。
12.つくる責任 つかう責任
日本の建築は今までスクラップ・アンド・ビルドが当たり前でしたが、永続的に住み続けられる住まいづくりや、リノベーションやコンバーションの設計施工、古民家再生などを積極的に行うことで、持続可能な社会に近づきます。
13.気候変動に具体的な対策を
地球温暖化など年々危機が迫っている中、災害対策のための技術向上も重要なポイントです。防災・減災に備えた住まいづくりや、災害時の行動に関する啓蒙活動を積極的に行う企業が増えています。
14.海の豊かさを守ろう
「建築」と「海の豊かさ」は、一見ほど遠いように感じますが、できることはあります。活動内容は、浜辺のゴミ拾い活動やプラスチックごみ削減の啓蒙活動などの身近なことから、漂流ごみの建築への再利用などの大規模なものまで様々です。
(例)
ByFusion Global(アメリカ・カリフォルニア州)
漂流ごみをはじめとしたプラスチックごみを建築用ブロックへ再利用する活動を行っています。コンクリートブロックのように建築資材として活用でき、落下してもひび割れたり粉砕することはありません。
15.陸の豊かさを守ろう
国産木材や地産木材の利用を通して、森林の維持サイクル実現に寄与できます。また、森林資源の活性化は土砂災害や生物の多様性化にもつながるため、自然環境の持続可能化に直結するでしょう。また、最近では現場の大小限らず、ビオトープ整備も進んでいます。
(例)
恩加島木材工業株式会社
国産木材はもちろん、地域を限定した地産木材の活用した突板製品の製造販売や、成長の早い植林材を利用した人工突板の開発を実施しています。
16.平和と公正をすべての人に
法令やコンポライアンスを遵守した社会活動を徹底することが重要です。また、CSR(企業の社会的責任)に対する取り組みも積極的に発信すると、平和で包摂的な社会につながります。
17.パートナーシップで目標を達成しよう
自社だけではなく、地域や同業他社、地方自治体と手を取り合って、持続可能な社会実現に向けて取り組みましょう。
(例)
地方創生協働リーダーシッププログラム ~MICHIKARA~
地方自治体・民間企業・地元住民が協力して、地方創生に向けて活動しています。その活動は幅広く、空き家対策から自然エネルギー活用促進、子育て世代の支援など、お互いの知識や意見を交えて、活発な意見交換が繰り広げられています。
■ これからは自社のSDGs活動を発信することが重要課題
SDGsは目標達成に向けて様々な視点から活動することも重要ですが、その内容や結果を社会に向けて発信することも求められています。
しかし、現実は「日々の業務に追われて、環境活動は後回しになりがち」という企業も少なくないはずです。
そんな場合は少しだけ視点を変えて、SDGsに向けた取り組みを発信することで得られるメリットについて考えてみましょう。
メリット① 企業の持続可能性をアピールできる
持続可能を意識した経営は、利用者から信頼や安心感を得ることができます。
経済不安が続く中、これは最も重要な広報活動と言えるでしょう。
長期に渡って継続して受注を獲得するためには、企業のサスティナビリティ(持続可能性)をアピールすることはとても重要です。
メリット② 社会貢献している姿勢をアピールできてイメージアップにつながる
今や、企業の規模に関係なく、CSR(企業の社会的責任)をアピールすることは常識になりつつあります。
その一環としてSDGsの取り組みを発信することは大切です。
建築業界だけではなく、様々な企業がブランディング戦略のうちの一つとして、SDGs活動を公開しているのもこのためです。
とかく、決してクリーンなイメージではない建築業界において、今後とても需要なキーポイントとなるでしょう。
メリット③ 意識の高い優秀な人材が集まりやすい
リモートワークの導入など、労働環境が多様化していくなかで、優秀な人材を確保することはどの企業にとっても重要な課題です。
SDGsは、その側面でもメリットとなります。
新任人事に関する情報を発信している人事ZINEの調査によると、就活生が企業を選ぶ際に見るポイントは以下の通りという結果が出ています。
給与や休日などの待遇と並んで、企業の成長性や将来性を重視していることが分かるでしょう。
また、安定性やチャレンジ性もランクインしています。
つまり、目先の待遇に惑わされずに就職先を選ぶ人材が増えているということです。
このことからも、人事採用においてもSDGsの取り組みを発信することは大きなメリットとなり得ます。
メリット④ ビジネスの場を広げられて受注拡大につながる
SDGsは、社会環境や自然環境を守るためだけのものと誤解されがちですが、実は経済にもたらす影響も大きいと言われています。
SDGs は全世界が合意した 2030 年の未来像を⽰すものであり、未来像と現在のギャップを埋めるためにはイノベーションが必要となります。SDGs が掲げる 169 のターゲットは、今後、変化が起きる領域でもあり、ビジネスにおいても新たな需要があると読むことができるのです。
引用:環境省|持続可能な開発⽬標(SDGs)活⽤ガイド[第 2版]
このように、SDGs によって、⾜りないものが⾒えるようになり、世界には巨⼤な潜在的マーケットがあることが⽰されました。今、世界中の各国政府、NGO、NPO、研究機関、⼤学などとともに、企業もSDGs の達成に向けて動き始めており、それがビジネスのあり⽅にも⼤きな影響を与えています。
環境省の発表によると、SDGsによってもたらされる潜在的マーケットは、全業界合わせて年間12兆ドル、2030年までに世界で生み出される雇用は約3億8000万人と試算されています。
SDGsが動き始めた2015年から目標達成を目指す2030年まで、ちょうど折り返し地点にいるものの、経済効果は計り知れません。
企業は存続や発展のために、2030年を見据えて今こそ行動を起こす必要があり、SDGsは今取り組むべき課題を分かりやすく示してくれる指標でもあります。
世の中のニーズを見極めるためにも、SDGsに取り組むことは決して無駄ではないのです。
■ 自社の取り組みを発信する方法は?
せっかくSDGsに積極的に取り組んでいても、その活動を世の中に発信できなければ、メリットが半減してしまうでしょう。
企業パンフレットや自社サービスに紐付けたプレゼンテーションによるアピールももちろん必要ですが、やはり最も効率的なのがホームページをはじめとしたWeb媒体による発信です。
「うちは小さい会社だからそこに費用も人材も割けない」そのように諦めている方もいるかもしれません。
しかし、現代のネット社会において、直接的な口コミや紙媒体でも広報活動には限界があります。
より多くの人にSDGs活動を含めた企業の強みや特性を伝えるためには、ホームページの作成・改善は欠かせません。
■まとめ
SDGsは日本国内のみならず、世界を巻き込んだ大きな潮流でもありトレンドワードでもあります。
“建築”は本来、私たちの生活に不可欠な住宅や都市築き上げることであり、まさに「持続可能な社会」そのものでもあります。
ですから、ゼネコンなどの大企業だけではなく、地場工務店や設計事務所などの小規模企業であっても、事業理念とSDGsの親和性は高いはずです。
今後のビジネスチャンスを逃さないためにも、ぜひSDGsについての情報に耳を傾けてみてください。
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