”ウクライナショック”が建築業界にもたらす影響とは?現状と今後の対策について
今年2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻に伴い、今経済界はもちろん建築業界でも「ウクライナショック」が起こっています。
まだまだ終息まで先が見えない状況が続く中、私たち“建築”に携わる者にとって知っておかなければいけない問題です。
そこで、今回は“ウクライナショック”が建築業界にもたらす影響や今度の対策について解説します。
目次
■ “ウクライナショック”が建築業界を大きく変える?主な2つの影響とは?
■ この現状をどう打破する?
■ 今後は“国産材利用”がキーワードに
■ まとめ
目次
■ “ウクライナショック ”が建築業界を大きく変える?主な2つの影響とは?
「ウクライナショック」とは、「ウクライナ危機」と呼ばれることもあり、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻がきっかけの様々な影響を総称します。
ロシアの株式市場やルーブルの暴落に伴う経済的影響を指すこともありますが、建築に関しては主に「エネルギー高騰」や「木材の高騰」を意味します。
何故なら、ロシアは世界有数の木材と原油・天然ガスなどのエネルギー輸出国だからです。
では、それぞれ現状を詳しく見ていきましょう。
その① エネルギーの高騰
建築には資材の製造や輸送、現場での重機稼働に伴い、多くのエネルギーを要します。
ロシア侵攻の前後では、原油価格が1.4倍ほどにまで高騰しているため、その影響は無視できません。
原油高騰とは、石油の需要と供給のギャップやそれに伴う投機マネーの流入などにより、原油の先物価格が大きく上昇することをいう。例えば2008年には原油価格が1バレル当たり103ドルを超えて原油高騰と言われたが、21年以降は新型コロナやロシアによるウクライナ侵攻などの影響を受け、一部の先物市場で1バレル当たり140ドルに迫る高値を付けている。
引用元:日経ビジネス
ただし、日本がロシアより輸入している原油量は全体の3.7%(2021年)に留まっているため、直接的な影響というよりも、世界的なエネルギー価格高騰に伴う間接的な影響と言えるでしょう。
一方で、石炭とLNG(液化天然ガス)におけるロシアからの輸入量はそれぞれ26.4%と59.9%と非常に高いため、未だロシアへの依存性が高いのが現状です。
(参考:日本経済新聞|対ロシア貿易、6月の原油輸入ゼロに LNG・石炭は増加)
今後の世界情勢によっては、より一層エネルギーコストが上がることが予想されているため、建築現場においても太陽光発電の積極的利用が進んでいます。
その② 木材の高騰
ロシア連邦森林局が2019年に公表したデータによると、原木輸出量は1,900~2,000万㎥と世界でもダントツ一位です。
また、合板などの製材輸出についても年々増加しており、2018年には3,166万㎥もの製品を世界に輸出しました。
(参考:林野庁|合法伐採木材等に関する情報:ロシア)
事実、日本もロシアからたくさんの木材を輸入しており、製材に至っては輸入量の17.6%がロシア産です。
このように、ウクライナショック後もロシアの木材に頼らざるを得ない状況の中、ロシアは日本を含む非友好国への輸出量を制限し、それが原因で他の生産地の木材価格が高騰してしまいました。
(参考:林野庁|ロシアによる「非友好国」への単板等の輸出禁止 )
また、エネルギー資源の価格高騰が原因で、資材の流通が鈍化し、納期遅延なども発生しており、2021年に新型コロナウイルス感染拡大がきっかけで発生したウッドショックもまだまだ尾を引いています。
実際に、大手製材会社や建材メーカー、ハウスメーカーゼネコンなどが、原料不足や価格高騰の影響を受けているという調査結果も出ています。
(参考:帝国データバンク|企業の 7 割超で価格転嫁に課題~ 3 社に1社は「全くできていない」 ~)
〈関連コラム〉
ミライスタイル|コラム|第三次ウッドショックとは?原因から今後建築にもたらす影響まで詳しく解説
■ この現状をどう打破する?
ロシア・ウクライナ情勢についてまだまだ予断を許さない状況が続く中、少なくとも数年の間はエネルギー資源や木材の価格高騰が続くことが予想されています。
既に、多くのハウスメーカーは1棟ごとの建設費を値上げしており、今後もその傾向は強いでしょう。
では、今後できるだけ建設費を抑え、納期遅延を阻止するためには、どのような対策を取れば良いのでしょうか?
ここでキーワードとなるのが、「国産材・地産材利用」です。
日本は国土の約2/3(約2,500万ha)が森林を占める、世界でも稀な“森林大国”です。
しかし、林業や製材業の高齢化などが原因で、木材自給率は41.8%(2020年)に留まっています。
(参考:林野庁|木材自給率の動向)
原木や製材の半数以上を未だ輸入材に頼っている現状を危惧し、日本では関連省庁で積極的に国産材利用を推進しています。
実際に、ウクライナショックに伴う急激な木材価格高騰を解決するために、「国産材転換支援緊急対策事業」を発足し、建築木材のひっ迫解決に向けて動き出しており、大手企業をはじめとして、年々国産材・地産材利用のケースは増え続けているのが現状です。
国産材や地産材を使うことは、世界情勢に左右されない安定的な供給を保てるだけではなく、運搬などに必要となるエネルギーを大きく削減できるため、環境問題の観点からも高く注目されているのです。
■ 今後は“国産材・地産材利用”がキーワードに
トレンドでもある「国産材・地産材利用」は、建築業界に携わる私たちにとっても大きなメリットをもたらします。
主なメリットは4つあり、幅広い業態の企業に関わってくることは否定できません。
その① 納期遅延・仕入れ困難・価格高騰を回避
まず、国産材や地産材を利用するということは、世界情勢の影響を受けにくいということです。
今回のウクライナショックのように、いつ何時木材輸出大国からの輸入が滞るか分かりません。
現場における木材自給率を少しでも高めることで、納期遅延や仕入れ困難、価格高騰の影響を抑えられます。
また、継続的に国産材や地産材を利用すれば、産業が安定して。輸入材の価格高騰に伴う国産材の価格高騰も起きにくくなるでしょう。
その② 脱二酸化炭素化
木材を遠い海外から運搬するには大量のエネルギーを必要とし、またその過程で多くの二酸化炭素を排出してしまいます。
その指標として使われているのが「ウッドマイレージ」で、木材輸送量 × 輸送距離で求められ、環境への負荷を表します。
実は、輸入材に頼っている日本は、このウッドマイレージが中国に続いて世界第2位。
ヨーロッパ材については、木材の輸送過程で発生する二酸化炭素量が国産材の約10倍にものぼってしまいます。
つまり、建築業界において更なる「国産材・地産材利用」が進むことで、確実に日本の二酸化炭素排出量は削減できるのです。
その③ SDGsへの取り組み
近年、各企業が積極的に取り組んでいるSDGsですが、「国産材・地産材利用」はその一環としても評価されています。
- ● SDGsの目標の中に「持続可能な森林の経営」という項目を挙げ、森林の繁栄そのものが「安全な水の確保」「住み続けられる街づくり」「気候変動に対する具体的な対策」「海・陸の豊かさを保つ」ことに繋がります。
- ● 国産材や地産材の利用は、森林の整備・保全に還元されるという大きな循環につながり、再造林や合法性が確認された木材の利用等を通じて森林が健全に維持されるようになります。
- ● 国内の林業や木材産業の活性化、ひいては日本経済の活性化につながります。
(参考:林野庁|持続可能な開発目標(SDGsエスディージーズ)に貢献する森林・林業・木材産業)
その④ CSRのアピール
SDGsへの企業活動を含めたCSRに対しても、今や「国産材・地産材利用」は無視できない存在です。
企業の環境配慮に対する姿勢や、その地域に根付いた建築物の建設など、エンドユーザーに向けた様々なアピールにつながるため、大手企業でも積極的に国産材・地産材利用を進めています。
(参考:日経XECH|三菱地所が福岡天神のイムズ跡地に20階建て木質ビル、建物を九州産材のCLTで覆う)
■まとめ
「ウクライナショック」は、建築、特に住宅業界に大きな影響を及ぼしています。
実際に、エンドユーザー(=施主)が実感する価格高騰も起きているため、残念ながらマーケットが鈍化していることは否定できないでしょう。
しかし、そんな現状だからこそ、常に新しい情報を得てそれを一般の方に伝えることで、新しい需要を獲得できるチャンスとも言えます。
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