“施主支給”とは?施主・業者それぞれのメリットとデメリットは?トラブル例についても
新築住宅やリノベーションの現場でよく耳にする「施主支給」。
施主が機器や部材を自ら購入して、設置や施工のみを業者が行う手段のことですが、実はそのメリット・デメリットをしっかりと理解していない方も少なくありません。
そこで、今回は「施主支給」について業者と施主双方のメリット・デメリットを紹介します。
目次
■ そもそも“施主支給”とはどんな仕組みなの?
■ 施主にとってのメリット・デメリットは?
■ 施工業者にとってのメリット・デメリットは?
■ “施主支給に対応できる”ことは会社の強みに
■ まとめ
目次
■ そもそも”施主支給”とはどんな仕組みなの?
住宅の新築やリノベーションをする際には、一般的にキッチンなどの設備機器やその他細かい部材は施工業者が販売店から仕入れて「材工共(ざいこうとも)」、つまり材料と工事を合わせて請け負います。
その一番の理由は、ずばり「一般小売価格よりも安い価格で仕入れ、材料費で浮いた分を工事予備費や利益に充てるため」です。
工事が進んでいくうちに、どうしても多少の工事変更や予期せぬ事態が起きることは少なくありません。
その場合、都度追加料金を施主に請求しては信頼関係に影響してしまいます。
ですから、大抵の施工業者はある程度の事態に対応できるよう、多少の予備費を確保しているのです。
つまり、施工業者が材料調達をして施工費と合わせて提示することで、施工単価が曖昧となり、工事中の細かいトラブルにも対応できるようになります。
では、「施主支給」の場合はどうなるのでしょうか?
施主支給は先ほどもお話しした通り、設備機器や部材を施主自らがメーカーや販売店から直接購入し、施工業者はその取り付け工事のみ請け負う方法です。
この場合、見積もりに計上されるのは工事費のみとなるため、業者はそれぞれの施工単価に予備費を加算せざるを得ません。
そのため、通常の施工単価よりも高くなるのが一般的です。
■ 施主にとってのメリット・デメリットは?
では、なぜ「施主支給」を選択する人がいるのでしょうか?
また、施主支給したことによるデメリットはどのような点なのでしょうか?
〈メリット〉
- ・施工業者によって商品やメーカーの制限がある場合でも、その垣根を越えた商品選択ができる。
- ・施工業者では取り扱いができない手作り品や中古品、アウトレット品なども選択できる。
〈デメリット〉
- ・納まりや専門的な知識を理解した上で、商品を選定しなくてはいけない。
- ・施工会社に施工方法などの情報を事細かに伝えなくてはいけない。
- ・商品によっては、業者経由で仕入れた方が安くなる場合がある。
- ・施工費用と合わせての支払いができないため、住宅ローンやリフォームローンは使えない可能性がある。
- ・納品について施主自ら段取らなくてはいけならず、タイミングが合わないと工期が長引く可能性がある。
- ・後から不具合が出た場合、施工不良なのか製品不良なのかが不明確になるため、施工保証を受けられない可能性がある。
- ・製品不良については、施主自らがメーカーなどに問い合わせてメンテナンスを手配しなくてはいけない。
上記の内容をまとめると、施主支給の一番のメリットは「商品選択の幅が広がる」という点でしょう。
施工業者によって安く仕入れられるメーカーや施工を得意とするメーカーが異なるため、どうしても商品の選択肢が狭まってしまうことは往々にしてあります。
しかし、施主支給ならそれらの制限を全く受けずに、好きなデザイン・納得のいく価格のものを購入できるのです。
一方で、商品に対する責任は全て施主が担うことになるため、慎重に商品を選ばないと様々なトラブルに発展してしまうでしょう。
- 「いざ設置しようとしたらサイズや仕様が違って納まらなかった」
- 「取り付けてみたものの不良品で、メーカー保証も施工保証も受けられず費用が無駄になった」
- 「使い始めたらすぐに不具合が出たものの、原因が特定できずに自費で直すことになった」…
「施主支給」で最も大きなトラブルになる可能性があるのが、引き渡し後のアフターサービスに関してです。
一般の方にはあまり知られていませんが、民法によって工事請負人(=施工業者)には瑕疵担保責任が課せられているのですが、実は「施主支給」の場合はその対象外となる可能性があります。
(請負人の担保責任の制限)
第636条 請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時に仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき)は、注文者は、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。
引用:e-Gov法令検索|民法
ですから、「施主支給」の方法を選ぶ際は、施工業者はこれらのデメリットについてしっかりと説明しなくてはいけませんし、施主もある程度のリスクを覚悟しなくてはいけません。
■ 施工業者にとってのメリット・デメリットは?
では、逆に施工業者にはメリット・デメリットはあるのでしょうか?
結論から言うと、施工業者側には「施主支給」をするメリットはほとんどありません。
むしろ、デメリットが多いため、施主支給の施工を断る会社もあります。
- ● 材料費で浮いた費用を工事費の予備費に充てられないため、工事費を高く提示せざるを得ない。
- ● 設置工事のタイミングを施工会社で調整できないため、工期に無駄やロスが生まれて効率が悪い。
- ● 製品の問題による不具合でも、施工不良を疑われてクレームの原因になってしまう。
- ● 施工に慣れない商品を取り扱わなければならず、工事ミスのリスクが高まってしまう。
- ● 海外からの輸入品の場合、日本の施工規格と合わず余計な工事が増えてしまう。…
施工業者が施主支給(=材料別)の見積もりを作成する場合、どうしても多少の予備費や利益を工事費に計上せざるを得ないため、単価だけ見ると割高な印象を持たれてしまいます。
そのため、予算にシビアなお客様や複数社に見積もりを取っているお客様の場合は、受注するのが困難になってしまう可能性もあるでしょう。
また、建築知識のない施主が安易に選択した商品の場合は、設置すらできずその責任を施工業者が持たなくていけなくなるケースもあります。
さらに、納期が遅れれば、その分工事がストップして経費だけがかさむ可能性すらあるのです。
これらの懸念点を避けたいがために、施工業者の中には「施主支給」を嫌がるところも少なくありません。
■ “施主支給に対応できる”ことは会社の強みに
誰でも簡単にインターネットで情報収集ができる現代において、施主がデザインや商品を無限な選択肢の中から選ぶことは決して難しいことではありません。
また、施工業者の工事単価を比較するサイトもあり、お客様によってはコストだけで会社を選ぶ場合もあります。
そんな今の時代だからこそ、「施主支給」のメリット・デメリットを丁寧に説明できる知識と、施主の希望を可能な限り実現させられる柔軟な対応が“肝”となるでしょう。
デザインを重視する方やその住宅に思い入れが大きい方ほど、「施主支給」を検討する傾向が強いため、安易に工事を請け負うのではなく、そのリスクを誠意を持って伝えることで信頼を得られる場合もあります。
一番NGなのが、じっくり検討もせずに真っ先に「施主支給」を断ってしまうことです。
これからより一層受注獲得が激戦となることも予想されるため、施主支給を即座に拒否するのではなく、施主・施工業者双方にとってどの方法がベストなのかを検討することも重要となります。
施主支給に対応できる“柔軟性”こそ、会社の強みにきっとなるはずです。
■まとめ
「施主支給」は施工業者にとってリスクやデメリットが多いため、受注を避けたい会社が多いことは否めません。
しかし、施主支給はお客様の理想を叶えるためには欠かせない要素でもあります。
お客様の声に耳を傾けられる会社だけが、今後も生き残れるということは誰の目にも明白です。
インターネット社会の現代だからこそ、施主支給を含めてフレキシブルに対応できる姿勢をホームページなどで表現することは重要でしょう。
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