建築基準法の改正で2025年の新築・リフォームはどう変わる|改正内容をまとめて一覧表で紹介

2025年に建築業界を大きく揺るがす“変化”があります。
それが、建築基準法の改正です。
特に住宅の新築やリフォームに関しては押さえておくべき変更点があり、ユーザーはより一層会社選びに注意が必要になり、事業者にとっても経営戦略の見直しが伴う可能性があります。
そこで今回は、2025年建築基準法改正の主旨と具体的な変更点、施行開始日などについて詳しく解説します。
目次
- 1 2025年の建築基準法改正の主旨は2つ|省エネ対策の加速、木材利用の促進
- 2 建築基準法の改正で2025年の新築・リフォームはどう変わる|改正内容・いつから施行日されるかを一覧表で紹介
- 3 2025年建築基準法の各改正内容をわかりやすく解説
- 3.1 【新築・リフォーム】省エネ性能向上のための設計・設備設置に対する高さ制限緩和
- 3.2 【新築・リフォーム】省エネ性能向上のための設計・設備設置に対する建ぺい率・容積率緩和
- 3.3 【新築・リフォーム】省エネ設備を外に置く際の容積率緩和に関する手続きの簡易化
- 3.4 【新築・リフォーム】大規模建物の木造利用に関する改正
- 3.5 【新築・リフォーム】省エネ基準への適合義務化
- 3.6 【新築・リフォーム】「平屋・200㎡以下」以外の建物まで詳細な構造規定の対象拡充
- 3.7 【リフォーム】採光規定の緩和
- 3.8 【リフォーム】「300㎡・16m以下、伝統的木造建築物等」は構造計算が不要になる
- 3.9 【リフォーム】既存不適格建築物の遡及適用の緩和
- 3.10 【リフォーム】同一敷地内に建築された団地のリフォーム規定の拡充
- 4 まとめ
2025年の建築基準法改正の主旨は2つ|省エネ対策の加速、木材利用の促進

建築基準法は1950年に「国民の生命・健康・財産を守るために、建築物の構造や設備、用途などに関する最低基準を担保する」ために制定された法律で、これまで社会の変化に合わせて度重なる改正を繰り返してきました。
2025年の改正には明確な主旨があり、2050年カーボンニュートラル・2030年度温室効果ガス46%削減(2013年度比)を実現するために、2つのポイントを改正の軸としています。
省エネ対策の加速
日本国内で消費されるエネルギーのうち、約30%はオフィス・店舗・住宅など建築物に由来します。(参考:環境省|建築物のエネルギー消費状況、環境省|家庭でのエネルギー消費量について)
この割合を削減するために、建物の省エネ対策(高断熱化・消費エネルギー削減など)を加速・義務化する改正内容が盛り込まれているのです。
また建築基準法と合わせて建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)も同時に改正される点もポイントです。
木材利用の促進
日本国内における木材需要の約40%を占める建築物分野において、さらに木材利用を促進させ、森林の活性化をもたらし大気中の二酸化炭素量削減を目指しています。
※森林の活性化:森林の木々を植林・間伐・伐採・利用し続けることにより、森林の二酸化炭素吸収量(固定量)が増えて、カーボンニュートラル実現に近づくとされている。(参考:林野庁|森林×SDGs)
建築基準法の改正で2025年の新築・リフォームはどう変わる|改正内容・いつから施行日されるかを一覧表で紹介

2025年の建築基準法改正は、2024年6月17日に公布されて実際の施行日は2025年4月1日です。
原則として、施行日以後に着工する物件に対して適用されます。
今回の改正では多数の点が変更となりますが、その中から住宅の新築・リフォームに関する主なポイントを紹介します。
新築・リフォームに関する変更点
- ・省エネ基準への適合義務化
- ・省エネ性能向上のための設計・設備設置に対する高さ制限緩和
- ・省エネ性能向上のための設計・設備設置に対する建ぺい率・容積率緩和
- ・省エネ設備を外に置く際の容積率緩和に関する手続きの簡易化
- ・大規模建物の木造利用に関する改正
- ・「平屋・200㎡以下」以外の建物まで詳細な構造規定の対象拡充
リフォームに関する変更点
- ・採光規定の緩和
- ・「300㎡・16m以下、伝統的木造建築物等」は構造計算が不要になる
- ・既存不適格建築物の遡及適用の緩和
- ・同一敷地内に建築された団地のリフォーム規定の拡充
●建物の省エネ性能レベル底上げを実現するための“義務化”追加
●非住宅・中大規模建築物の木造化・内装の木質化を進めるための“防火規定緩和と法整備”
●増え続ける既存建築物の有効活用や長寿命化によって省エネを実現するための“法緩和”
2025年建築基準法の各改正内容をわかりやすく解説

では、特に多くの方にかかわる住宅の新築・リフォームに関連する改正点を詳しく紹介します。
【新築・リフォーム】省エネ性能向上のための設計・設備設置に対する高さ制限緩和
主に住宅を建てるための地域で、屋外に面する部分へ省エネ性向上を目的とした工事をして、やむを得ず規定以上の建物高さになる場合、特例でそれを許可する制度が盛り込まれます。
建築基準法では周辺建物が長時間日陰にならないように、用途地域ごとに建物高さの上限を決めており、これを一般的に「高さ制限」と呼びます。
※高さ制限:道路斜線制限・隣地斜線制限・北側斜線制限・絶対高さ制限があり、建物を建てる際はすべての制限を守らなくてはいけない。
高さ制限に関する緩和が追加されると、厚く断熱性能の高い屋根材や屋根・屋上に設置する太陽熱利用設備・太陽光発電システムを導入するにあたって、法令によるハードルが低くなります。
【新築・リフォーム】省エネ性能向上のための設計・設備設置に対する建ぺい率・容積率緩和
主に住宅を建てるための地域で、建物の断熱・遮熱性を高めるための工事によって、やむを得ず建蔽率や容積率の上限を超える場合、特例でそれを許可する制度が盛り込まれます。
※建蔽(けんぺい)率:敷地に対する建築面積の割合で、用途地域ごとに上限が決められている。
※容積率:敷地に対する延べ床面積の割合で、用途地域ごとに上限が決められている。
この緩和によって、分厚く断熱性能の高い外壁や日射遮蔽効果の高い庇などを新築・リフォームのプランへ取り込める可能性が高まります。
【新築・リフォーム】省エネ設備を外に置く際の容積率緩和に関する手続きの簡易化
マンションなどの共同住宅において、ヒートポンプ式給湯器を含む大型の高効率給湯設備を設置する場合、その設置面積を容積率に含むかどうかの審査を簡易化する制度が追加されます。
改正前は建築審査会を経て容積率の特例が適用されるか決まりましたが、改正後は建築審査会を通さないため、よりスピーディに特例を認められる可能性が高まります。
【新築・リフォーム】大規模建物の木造利用に関する改正
これまで、中規模以上の建物や不特定多数の人が利用する特殊建築物には、防火関連の規定によって木造や内装の木質化を実現できませんでした。
これを解決してより木材利用を促進するために、以下の点が改正されます。
改正前 | 改正後 |
---|---|
3000㎡超の大規模建築物について、 ・壁や柱、梁などを耐火構造とする ・3000㎡ごとに耐火構造体で防火区画する | 3000㎡超の大規模建築物について、 ・火災時に周囲への危害を防ぐ工夫が施されていれば、木材の「あらわし」を採用したプランが可能 =木材や木質建材を内装に採用しやすい |
5階建て以上14階建て以下の建築物最下層では、同レベルの耐火性能(2時間耐火)が必要 | 5階建て以上9階建て以下の建築物最下層は、90分耐火性能で設計できる =中層建築物の耐火性能基準合理化 |
低層部と高層部では、同等の耐火性能が必要 | 高耐火の壁や離隔距離をとれる渡り廊下で分棟されていれば、高層部・低層部をそれぞれ階数に応じて防火規定が適用される =低層部分を木造にしやすい |
木造部分と一体で耐火構造や準耐火構造の部分を作ると、耐火・準耐火構造部分にも防火壁を設置しなくてはいけない | 他の部分と防火壁で区画された1000㎡超の耐火・準耐火構造部分には、防火壁の設置が必要ない =木造と非木造の混構造を実現しやすい |
【新築・リフォーム】省エネ基準への適合義務化
建築基準法改正に伴う建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)改正によって、すべての建築物(新築および建築確認を伴うリフォーム)に対して省エネ基準への適合が義務化されます。
※省エネ基準:「一次エネルギー消費量」「外皮(外壁や窓等)における表面積あたりの熱の損失量(外皮平均熱貫流率等)」に対する基準で、建物用途や地域ごとに数値が設定されている。
具体的には、建築確認の際に省エネ基準に適合していることを証明する公的な資料を添付するようになります。
【新築・リフォーム】「平屋・200㎡以下」以外の建物まで詳細な構造規定の対象拡充
この度の建築基準法改正で、ほとんどの住宅において、確認申請時の構造審査でより詳細な資料が必要になります。
この改正は建築業界で「四号特例の廃止」と呼ばれており、建築確認申請における手続きの対象となる建築物の区分が変更されます。(参考:国土交通省|建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し)
これまでは「2階建て以下で延べ床面積500㎡以下」の木造建築物は、建築士が設計・工事監理を行えば建築確認の際に簡易的な構造計算のみで建築可能でしたが、改正後は、「平屋建てかつ延べ床面積200㎡以下」以外の建築物は、全ての建築物でより詳細な構造規定の審査が必要です。
【リフォーム】採光規定の緩和
建築基準法において、住宅やホテル・病院・学校などの居室では、採光に有効な窓など開口部分の最低面積が定められています。
今回の改正では、この規定の対象外である事務所・オフィスから規定対象となる用途へリフォームする場合、有効採光面積が床面積の1/7以上から1/10以上まで緩和されます。
具体的な緩和条件は施行後に個別の告示にて決まりますが、窓の面積が足りない場合は照明設備を増やすなどの工夫が求められる予定です。
【リフォーム】「300㎡・16m以下、伝統的木造建築物等」は構造計算が不要になる
延べ床面積300㎡未満の既存建築物や小規模伝統的木造建築物は、構造設計一級建築士がリフォームの設計をしたり、その他、専門的知識を持つ人が建築確認審査をすれば、構造計算適合性判定は必要なくなります。
構造計算適合性判定とは、建築物の構造(計画や耐久性)が現行の建築基準法に適合しているかどうかを審査する制度です。
構造計算適合性判定が不要になると確認申請時の構造計算も不要になります。
【リフォーム】既存不適格建築物の遡及適用の緩和
既存不適格建築物とは、新築当時の建築確認をクリアしたものの、現行の建築基準法に適合していない建物を指します。
建築分野における遡及(そきゅう)適用は、原則として建築物全体を現行基準に適合させるという意味です。
2025年の建築基準法改正では、主に防火・避難規定について一部が遡及適用の対象外となります。
- ・建物の省エネ化や長寿命化を目的とするリフォームに対して、一定の改修工事を防火規定や防火区画規定の対象外とする
- ・建物の省エネ化や長寿命化を目的とするリフォームに対して、一定の改修工事を接道義務や道路内建築制限の対象外とする
- ・分棟タイプのように区画分け建築物の1つの棟に増改築する場合、防火規定や防火区画規定の対象外とする
※接道義務:災害時の避難経路や緊急車両の通行を確保するために、敷地が道路に2m以上接していなくてはいけない決まり。
【リフォーム】同一敷地内に建築された団地のリフォーム規定の拡充
建築基準法では、安全上・防火上・衛生上で支障がないと行政が認めた場合、団地の土地全体を1つの敷地とみなして法令が適用され、新築や増改築、移転をするのが原則です。
しかし、これまで大規模修繕は対象外で、接道していない棟では修繕できないなど老朽化した団地における省エネ・長寿命化改修の足かせとなっていました。
今回の改正では、団地で大規模修繕や大規模な模様替えをする際にも、団地の土地全体を1つの敷地としてみなす対象となります。
これによって、団地全体の性能向上を目的とした大規模なリフォームを実現しやすくなります。
ミライスタイルは建築業界に特化したWEB運用会社で、工務店様・リフォーム会社様などのホームページ制作や運用をサポートしております。
「建築基準法改正に伴って自社の強みを打ち出して集客に繋げたい」という方は、お気軽に弊社までご相談ください。
まとめ
2025年の建築基準法改正が住宅・リフォーム業界に与える影響は大きく、特に省エネや構造にかかわる変更は、ユーザーにとっては価格の値上がり、事業者にとっては業務フローの変更をもたらす可能性があります。
そのため、2025年4月以降に家を建てる方や今後も住宅の新築・リフォームを手掛ける企業様は、建築基準法の改正点を事前に確認しておきましょう。

ミライスタイルは、建築業界に特化したWEB制作会社です。
インターネット広告・各種SNSの運用、アプリ開発などについても対応し、建築業界のWEB活用を幅広くサポートしています。
【WEB幹事の『工務店・建築会社に強い優良ホームページ制作会社16社をプロが厳選!【2023年版】目的別におすすめ』にて、ミライスタイルが紹介されました。】
また、建築業界に特化したホームページ制作・運用に関する、オンラインセミナーを定期的に開催しております。
ミライスタイルは、全国からお問い合わせいただけるホームページ制作・運用会社です。
オンライン個別相談を毎日開催しておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
株式会社ミライスタイル
〒300-2417茨城県つくばみらい市富士見が丘2-14-5
tel:029-734-1307
fax:029-734-1308