3Dプリンター住宅は日本の住宅業界にどんな影響を与える?メリット・デメリットと課題

遂に、日本でも3Dプリンター住宅が実用化され始めました。
ニュースなどでは安価にマイホームを建てられると取り上げられることもあり、一般の方からの注目が高まっています。
工務店やハウスメーカーの方ですと、今後住宅業界に与える影響が心配な方も多いはずです。
そこで、今回は「3Dプリンター住宅」について、メリット・デメリットや注目が高まっている理由、海外の事例、住宅業界に与える影響を詳しく解説します。
目次
■3Dプリンター住宅がついに誕生|そのメリットとは?
■3Dプリンター住宅注目の裏には「老後まで続く住宅ローン返済」への不安が
■3Dプリンター住宅は日本で普及しない?建築基準法上の問題やデメリット・注意点
■海外の3Dプリンター住宅|デジタルファブリケーションの実用化
■建設用3Dプリンターがこれから住宅業界へ与える影響は?
■SNSとホームページの運用は建築に特化した“プロ”にお任せを
■「3Dプリンター住宅」が世間一般に普及するまでは、まだかなりの年数がかかると予想されているため、工務店・ハウスメーカーなど住宅に関わる企業は、自社の強みを消費者に伝え、安定的かつ着実に集客を続けることが重要です。
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■3Dプリンター住宅がついに誕生|そのメリットとは?

兵庫県にあるセレンディクスが、日本国内発の3Dプリンター住宅「serendix10」「serendix50」を実用化したニュースは、住宅業界を大きく騒がせました。(参考:朝日新聞GLOBE+|3Dプリンターで作った家は安いだけではない 素材もエネルギーもカットで環境に優しく)
これらの3Dプリンター住宅は、ノズルから連続的に吐き出される特殊なコンクリートが積層することで形作られます。
メリットは主に5点です。
- ①「工期短縮」
構造体から内装の主な部分まで3Dプリンターで出力するため、人が行う作業を大幅に減らせます。 - ②「耐熱性・耐震性・耐久性・気密性・防水性が高い」
コンクリートが細かく積層されて作られるため、構造体に繋ぎ目がなく建物全てが一体化します。 - ③「工事費の削減」
人件費がかからず、木材のように材料費が大きく変動することもないため、大幅に工事費を圧縮できます。 - ④「廃棄物が少ない」
資材を切って施工するのではないため、端材が出ず、廃棄物を大幅に減らせます。 - ⑤「品質ムラがない」
データを基に機械が作り上げるため、仕上がりムラがありません。
工期が短いことから、今後は被災地の仮設住宅建設へ活用されることも期待されています。
そして、最も注目されているのが「工事費の削減」です。
今後何十年にも渡り住宅ローンを返済し続けることに不安を感じている方や、老後のためのコンパクトな家を自己資金だけで購入したい方からの需要が高まっています。
■3Dプリンター住宅注目の裏には「老後まで続く住宅ローン返済」への不安が

ウッドショック以降、インフラによる材料費・人件費高騰により、戸建住宅・マンションともに価格は高騰しています。
そのため、マイホームを買いたくても買えない方が増えているのが現状です。
住宅金融支援機構が行った調査によると、2011年にフラット35利用者の平均年齢が「39.7歳」だったのに対して、2022年には全体の平均年齢が「42.8歳」、注文住宅融資利用者に限定すると平均「46.2歳」まで上昇しています。(参考:住宅金融支援機構|フラット35利用者調査)
46.2歳の方が仮に35年間住宅ローンを返済し続けると、完済時には80歳を超えてしまう計算になります。
最近は、最長50年間の住宅ローンを提供する金融機関も増えており、もはや定年前に完済することを前提としなくなってきているのです。
このような現状から、これまでの住宅とは比べ物にならないほど破格の3Dプリンター住宅の購入を検討する方が増えています。
■3Dプリンター住宅は日本で普及しない?建築基準法上の問題やデメリット・注意点

特殊なコンクリートをプリンターから連続して吐き出して構造物を作る建設用3Dプリンターの進化は続いています。
建設用3Dプリンターの開発が進むほど、現場で人が作業することがなくなり、工期短縮・人件費の削減・省資源・省エネルギーの進展が期待されているのです。
ただし、日本で3Dプリンター住宅が一般的になるまでには、まだいくつものハードルを越えなくてははいけません。
- ・地震などに関する建築基準法の規定を満たしていない
- ・人の手による工事も必要
- ・広い敷地が必要
- ・現時点ではデザインや間取りの自由度は低い
- ・不明確な要素が多い
では、それぞれ詳しく解説します。
地震などに関する建築基準法の規定を満たしていない
現行の建築基準法は、「木造・鉄筋コンクリート造・鉄骨造・鉄骨鉄筋コンクリート造」など、今まで施工されてきた構法に関する規定しかありません。
そのため、新たな技術である3Dプリンターを用いた建物は、「建築基準法の規定を満たしてない」と判断せざるを得ないのが現状です。
- ・現行の建築基準法では、3Dプリンター住宅に関する規定がなく、定められている強度(耐震性・耐風性・耐火性・耐荷重など)をクリアできない。
- ・建設用3Dプリンターで出力できるモルタルは、国土交通大臣が定める指定建築材料(建築基準法第37条)に該当せず、建築基準法上の強度等が満たされない。
(参考:国土交通省|建設用3Dプリンタにおいて用いられるモルタルの取扱い)
これらのことから、現在日本国内で販売されている3Dプリンター住宅は、十分な強度があるにもかかわらず、建築基準法の規定をクリアするためだけに鉄筋が入れられています。
つまり、本来いらないものも法を遵守するために施工されているのです。
そのため、現在の建築基準法が大きく改正されない限り、3Dプリンター住宅が劇的に普及することは難しいと言われています。
人の手による工事も必要
3Dプリンターで出力できるのは、コンクリートだけであり、基本的には構造体・外壁・内壁・床を作る作業しかできません。
そのため、以下の工事は人の手によって行われます。
- ・設備工事(給排水配管)
- ・電気工事(配線工事)
- ・内装工事(塗装・クロス張り・フローリング張りなど)
- ・細かい造作工事(家具造作など)
つまり、3Dプリンター住宅の標準価格に加え、これらの追加工事費用がかかるということです。
それでも、これまでの工法と比べるとトータルコストを抑えられますが、住宅本体価格の何倍もの追加費用がかかる可能性があるため、注意しましょう。
広い敷地が必要
3Dプリンターを設置するための足場を組んだり、プリンター本体を置くためには、住宅のサイズよりもかなり余裕のある敷地が必要です。
そのため、現代の技術では、隣との間が1mにも満たないような土地や駐車場を作るスペースを確保できない土地では、3Dプリンター住宅を建てられません。
現時点ではデザインや間取りの自由度が低い
こちらは、今後3Dプリンター住宅が普及すれば解決されるデメリットかもしれませんが、現状はデザインや間取りが決まっており、自由に変更できません。
なぜなら、3Dプリンターで出力するためには、細かなデータ作成が必要だからです。
ただし、人の手では表現できない複雑な曲線や細かな装飾も3Dプリンターなら実現化できるため、今後はデザインの幅がかなり広がることも考えられます。
3Dプリンター住宅を建てる際に、もう一点注意しなくてはいけないのが、「積層痕」です。
3Dプリンター住宅は、細く吐き出されたモルタルが積み重なって形成されるため、その痕がどうしても残ってしまいます。
これを見えなくするためには、上から左官工事やサイディング工事をしなくてはならず、その分費用がかさんでしまいます。
そのため、3Dプリンター住宅を建てる際は、仕上がりを現物で確認することが重要です。
不明確な要素が多い
3Dプリンター住宅は、まだ実用化されて数年しか経っておらず、10年後・20年後どうなるかは不明瞭です。
理論上は鉄筋コンクリート造と同様の寿命があり、耐震性・耐火性・耐風性・耐水性に強いとされていますが、実際に建てられてから数十年経っている物件がないことに、不安を感じる方は少なくありません。
■海外の3Dプリンター住宅|デジタルファブリケーションの実用化

3Dプリンター建築に欠かせないのが「デジタルファブリケーション」です。
デジタル+ファブリケーション(製造)を組み合わせた造語で、建築業界の人手不足を解決する糸口として注目されています。
日本でももちろん開発は進められていますが、世界の中でも特に力を入れているのがアメリカです。
アメリカでは、大手デベロッパーによる3Dプリンター住宅100軒で構成された地域の建設プロジェクトが実行され、既に2023年から引き渡しが始まっています。
製造工程をデジタル化することで。できるだけ無駄をなくして効率的に生産することこそ、デジタルファブリケーション最大の目的です。
海外では一般的な住宅を建てるだけではなく、省エネ住宅の代表格であるZEH(ネットゼロエネルギーハウス)の建設にまで3Dプリンターが活用され始めています。
■建設用3Dプリンターがこれから住宅業界へ与える影響は?

建設用を含む産業用3Dプリンターの市場は、2021年に全世界で21億ドルでしたが、5年後の2026年には52億ドルにまで拡大すると推測されています。
人手不足が深刻な建築業界において、3Dプリンターが現場の主力となる未来はそう遠くないかもしれません。
そして、比較的小型で量産しやすい戸建住宅の場合は、3Dプリンターを購入すれば、あとは数少ない材料を揃えれば、1日で1軒の家を建てられます。
つまり、初期投資費用の回収率が高いということです。
そのため、今後、建築基準法の規定が整備されてくると、3Dプリンター住宅の建設に参入するハウスメーカーが出てくるかもしれません。
ただし、3Dプリンター住宅が木造住宅ほど普及するまでには、数十年かかる可能性は十分あるため、「これまで建てられてきた従来の住宅とは全く別物」と捉えている会社が大半です。
そのため、工務店・ハウスメーカーは、これからも自社の強みを全面に押し出した集客戦略を継続することが重要になります。
安定的かつ着実に集客するためにも、SNSや自社ホームページを積極的に運営することをおすすめします。
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■SNSとホームページの運用は建築に特化した“プロ”にお任せを

ライバルの多い住宅・リフォーム業界で集客を獲得するためには、オフライン・オンラインにこだわらず、いくつかの集客媒体を併用することが必要です。
特に、会社の認知度アップにはホームページやSNSの運用が欠かせません。
しかし、中小規模の会社ですと通常業務に追われて、なかなかそこまで手がつけられないという会社も多いでしょう。
そのような場合は、思い切ってプロにWEB運用を任せてみませんか?
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