CLTとは今注目のサスティナブルな建材|基礎知識からこれからの可能性について解説
地球温暖化が深刻化している昨今、建築業界においてもサスティナブル化が大きな課題となっています。
そこで、日本国内のみならず世界的に注目されているのが「CLT」です。
法整備がされてからまだ10年も経っていないため、まだまだ導入していない会社が多いかもしれません。
そこで、今回はそんな「CLT」についての基礎知識からメリットなどについて解説します。
目次
■ CLTとは?
■ CLTが持つ “6つ” のメリット
■ 集成材やLVLとの違いは?
■ CLTのデメリットや今後の課題は?
■ CLT建築を導入する意義とは?
目次
■ CLTとは?
CLTとは、直交集成板(英:Cross Laminated Timber)の略称で、挽き板(ひきいた)と呼ばれる木材を薄く切ったものを、繊維が直交し合うように重ね合わせて接着した建材です。
家具や建築構造材として使われ、近年は多くの建設会社がこのCLTを導入しています。
CLTの歴史はまだ浅く、1995年頃にオーストラリアなどで流通し、その後欧米を初めとした先進国に普及していきました。
日本では、2013(平成25)年12月に制定されたJAS(日本農林規格)の製造規格によって正式に定義づけされ、2016年4月に建築基準法告示に明記されてから、CLTの建築利用が始まりました。
(適用の範囲)
第1条 この規格は、ひき板又は小角材(これらをその繊維方向を互いにほぼ平行にして長さ方向に接合接着して調整したものを含む。)をその繊維方向を互いにほぼ平行にして幅方向に並べ又は接着したものを、主としてその繊維方向を互いにほぼ直角にして積層接着し3層以上の構造を持たせた一般材(以下「直交集成板」という。)に適用する。
引用元:直交集成板の日本農林規格
■ CLTが持つ “6つ” のメリット
では、なぜ世界的にCLTの利用が活発化しているのでしょうか?
これには「6つ」の理由があります。
- ・工期短縮が可能だから
- ・他の構造体より軽いから
- ・耐震性が確保できるから
- ・断熱性・遮炎性・遮熱性に優れているから
- ・木の温もりを感じられるから
- ・環境への負荷が少ないから
では、それぞれ詳しく解説していきます。
メリット① 工期短縮が可能
CLTを工場でパネル化し現場で乾式施工することで、RC造などの湿式工法と比べて大幅に工期を短縮できます。
実際、RC造と比べて3ヶ月も工期が短縮したという事例もあるほどです。
18年に着工した10階建の木造賃貸マンション「PARK WOOD 高森」プロジェクト(宮城・仙台)では、設計段階から防耐火技術・構造技術、施工方法の検証を重ね、CLT工事の合理化の確立を目指した。結果、CLTと鉄骨の乾式工法は、RC造と比べ約3カ月の工期短縮。CLTを石膏系SL材で被覆し、高層化に必要な2時間耐火性能と被覆工事の省力化を実現した。木造なので建物が軽く、基礎工事の工期も短縮できた。
引用元:日経XTECH|CLT建築実案件から得られた課題と展望
ただし、まだまだ中規模以上の建築物への導入実績は発展途上であるため、コスト面での課題はあります。
今後さらに普及することによって、この懸念点が解消されてくることが期待されています。
メリット② 他の構造体より軽い
RC(鉄筋コンクリート)と比較すると、CLTの重量は約20%程度とかなり軽量です。
建材の重量がこれほどまでに軽くなるということは、基礎工事にかかるコストの削減や、材料輸送コストの軽減など、様々なメリットをもたらします。
このことからも、今後の大規模建築物への導入は大きな課題です。
メリット③ 耐震性が確保できる
同サイズのプレキャストコンクリート(PC)板と比べても、1/4程度の重要となるため、建物そのものを軽量化でき、地震被害を減少させられます。
また、国土技術政策総合研究所が行った国産スギCLTパネル構造の耐震実験では、阪神淡路大震災レベルの地震でも倒壊しないという結果も得られました。(CLT建築推進協議会より)
そして、日本と同様に地震の多いヨーロッパでは、軸組工法よりも接合部が少ないため、地震などによる損傷が集約しやすく構造上の安全性が予測しやすい点もメリットとして考えられています。(「一般社団法人 日本CLT協会|CLT 視察ツアー2019 in 欧州 報告書」より)
メリット④ 断熱性・遮炎性・遮熱性がある
「木材は燃えやすく火に弱い」と思われがちですが、実は木・鉄・アルミを同じ条件で燃やしてみると、木は最も熱伝導率が低いことが分かっています。
そして、CLTは一般的に90~210mm程度の厚さがあるため、燃え切るまでにはかなりの時間を要します。
そのため、火災時にも十分建物内にいる人が避難する時間を確保できるのです。
熱伝導率が低いということは、夏の暑さや冬の寒さも伝えないということ。
建物内の室温を一定の温度に保ちやすく、空調負荷を軽減できる点も大きなメリットです。
メリット⑤ 木の温もりを感じられる
先ほど、CLTは家具や構造体に使われるとお話ししましたが、敢えて表面にP.B(石膏ボード)など貼らずに仕上げれば、木本来の風合いをインテリアに生かすことも可能です。
木が人体にもたらすメリットについては近年研究が進められており、心理的な効果はもちろん、血圧や心拍数低下などの身体的な利点も明らかになっています。(「林野庁|科学的データによる木材・木造建築物のQ&A」参照)
メリット⑥ 環境への負荷が少ない
木材は、他の建築材料と比べても環境への負荷が小さいことが分かっています。
その理由は主に4つです。
- ・木材の積極的利用は、森林を循環させ活性化させるため
- ・樹木の成長過程で多くのCO2を吸収し、地球温暖化防止につながるため
- ・木材はライフサイクルCO2排出量が少なく、建設時に使うエネルギー量も少ないため
- ・再生可能な自然であるため
さらに、CLTについては製材用としては使えない曲がった樹木や幹が細い間伐材を原料にすることもできるため、材料ロスが少ない点も大きな長所です。
日本の貴重な天然資源である森林を守り、その価値をさらに高めるためにも、CLTの利用は有効と言われています。
■ 集成材やLVLとの違いは?
CLTとよく混同されがちなのが、「集成材」や「LVL」ですが、薄く切り出した木材の板を積層し接着するという点では同じと言えるでしょう。
ただし、大きく違うのはその「繊維方向」です。
先ほどもお話しした通り、CLTは直交集成板と言われる通り、挽き板通しの繊維(木目)が直交するように重ねていきます。
一方、家具などで使われる集成材や戸建住宅の梁などに使われるLVLは、繊維方向を揃えて積層接着した材料です。
繊維を直交させて重ねることにより、平行に重ねるよりも寸法安定性が高く、強度も勝ることが分かっています。
■ CLTのデメリットや今後の課題は?
カーボンニュートラルや森林資源保護の観点から、世界的にCLTの社会的ニーズは高まっています。
しかし、コスト面や施工会社の工事経験不足から、まだまだ「普及した」とは言い切れないのが現状です。
- ・設計者の情報不足
- ・施工者がCLTの施工を避ける
- ・施工者がCLTの調達ルートを確立できていない
- ・設計者がメンテナンスについて不明確 …
これらの原因から、どうしてもCLTの建築を避けてしまう企業が多く、なかなか黎明期から普及期に移行できていません。
ただし、一方で中小規模建築をCLT工法で設計する設計事務所や検察会社が増えているのも事実です。
関係各所が設計や施工に関する啓蒙活動をさらに活発化させ、設計者や施工者がそれらを積極的に受け止めることこそ、普及させる一番の方法と言えるでしょう。
■ CLT建築を導入する意義とは?
現状ですと、CLT建築を実施しているのは大手の建設会社や住宅メーカーが中心となり、まだまだ中小規模の工務店などにまで浸透しきれていません。
裏を返せば、そんな今だからこそCLT建築を導入することは大きなビジネスチャンスとなり得ます。
また、環境保護に対して高い意識を持っていることをアピールすることにもつながります。
最近では、一般の方が建築会社を選ぶ際に、SDGsへの意識も判断材料となるため、今後の受注拡大には、環境問題への配慮も重要なカギです。
このことからも、企業のSDGsやCSRへの取り組みの一環として、CLTの導入は今後不可欠になるでしょう。
■まとめ
CLTは単なる新しい建材ではなく、環境に配慮したサスティナブルな材料です。
導入するまでは十分な情報が必要となるため、決してハードルは低くはありません。
しかし、まだ黎明期を脱していない今だからこそ、CLT建築を実施する価値は大きいなチャンスと考えられます。
また、企業としてSDGsの取り組みを強くアピールするためにも、CLT工法の導入は今後避けては通れません。
日本が世界に誇る資源である“森林”を守るためにも、ぜひCLT建築について一度じっくり考えてみてください。
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