インボイス制度で建設業はどう変わる?工務店・一人親方も知っておくべき対策
2023年からスタートするインボイス制度。建設業においても、発注者・受注者問わず影響があるため、必ず内容を把握しておく必要があります。
インボイス制度による建設業界の影響は、免税事業者であることが多い一人親方にとって大きい印象があると思います。しかし一人親方と取引をしている工務店にとっても税負担に関わるため、軽視することはできません。
今回はインボイス制度の基本的な内容から、建設業界に与える影響、スタート前の準備について解説します。
コラムのポイント
- インボイス制度がスタートすると、工務店・一人親方どちらも消費税の負担が増加する可能性があります。
- 建設業においてはインボイス制度に対応するだけでなく、長期的な視点で根本的な改革を進める必要もあります。
目次
インボイス制度とは
インボイス制度が建設業に与える影響を掘り下げる前に、まずは基本的な内容をおさらいしておきましょう。
インボイス制度の正式名称は「適格請求書等保存方式」で、決められた規格の請求書で適用税率や税額を明確にするのが目的です。
2023年10月1日にインボイス制度がスタートした後は、インボイス(適格請求書)以外の課税仕入れは仕入れ税額控除を受けることができません。インボイス(適格請求書)を発行するためには、「適格請求書発行事業者」として登録する必要があります。インボイス登録しないと自社の仕入れ税額控除を受けられないだけでなく、取引先も同様に税負担が増えてしまうことになります。しかし売上1,000万円以下の免税事業者はインボイス登録すると課税事業者になり消費税の納税義務が発生するため、多くの業界で対応について議論されている状態です。
インボイス制度で建設業はどう変わる?
インボイス制度が導入されることで、建設業界にはどんな影響があるのか、工務店・一人親方の2つの視点で確認しましょう。
工務店への影響
元々売上1,000万円で課税業者である工務店やハウスメーカーにとって、インボイス登録することによる負担増やデメリットはありません。しかし工事を発注している一人親方や下請け会社が免税事業者の場合、インボイスを発行できず仕入れに係る消費税を控除できなくなります。
インボイス登録は任意であり、下請けに対して強制することはできません。免税事業者の一人親方への発注が多い工務店は、インボイス制度が始まることで税負担が大きく増加する可能性があるのです。
また請求書の形式が変わり、内容確認の複雑化など経理業務の負担が増加する可能性も考えられます。課税事業者と免税事業者両方に発注する場合の仕分けなど、今までにない経理業も発生します。人員の増員、インボイス制度に対応した経理システムの導入などの対策が必要になるかもしれません。
一人親方への影響
現在売上1,000万円以下の一人親方は、インボイス登録するために課税事業者となって消費税を納める必要が発生します。これまで免除されていた消費税の負担が増えるため、資金繰りが厳しくなるケースも考えられます。
前述したようにインボイス登録は強制ではないため、免税事業者のまま事業を続けることも可能です。しかしその場合は発注元である工務店の税負担が増えてしまうため、仕事をもらえなくなってしまう可能性が考えられます。
インボイス制度開始までに取るべき対策
工務店・一人親方でしっかり話し合う
どのような対策を取るにせよ、まずは工務店と一人親方でそれぞれの意思を確認することが大切です。インボイス制度が始まると、発注側・受注側どちらかの負担が増えるのは間違いありません。お互いの方針を確認してから、適切な対策を取ることが大切です。
一人親方がインボイス登録しないと、工務店が仕入れ税額控除できなくなり税負担が増加します。工務店の資金繰りが悪化して倒産してしまっては、仕事を受注する一人親方も共倒れになってしまうでしょう。
しかし、インボイス登録によって一人親方の負担が増加した結果、仕事を受けられない状態になっては工務店の仕事も回りません。それぞれの負担や考えられる対策を確認し、インボイス登録するのか、しないのか話し合う必要があるでしょう。
一人親方を雇用して従業員にする
ほぼ専属状態で一人親方に仕事を発注している状態なら、正式に雇用して従業員にするのも一つの対策です。自社従業員にしてしまえば給与を支払う形になるので、インボイス発行は不要となります。従業員になることで一人親方は安定した収入を得られ、工務店も急に仕事を請けてもらえなくなるリスクが無くなります。
ただし一人親方を正式に従業員として雇用する場合、社会保険料や福利厚生などの費用負担は増加します。また一人親方はほかの仕事を請けられなくなるため、確実に仕事が続く工務店を見極めなければいけません。
メリット・デメリットを見極めて、しっかり話し合う必要がある対策です。
簡易課税制度を活用する
インボイス制度では消費税額がそのまま負担増となるわけではなく、仕入れに係った消費税を差し引いた分を納税します。この差し引く分を「仕入れ税額控除」と呼び、材料購入費や仕事の外注費、諸経費などが含まれます。しかし経理業務を自分で行っている一人親方にとって、仕入れ税額控除の計算は大きな負担になりかねません。
そこで、課税売上高5,000万円以下の事業者は、簡易課税制度を活用することで、みなし仕入れ率で納税額を簡単に計算することができます。
みなし仕入れ率は業種によって異なりますが、建設業の一人親方はみなし仕入れ率70%に分類されています。
※簡便法による仕入れ控除税額の計算
仕入れ控除税額=第3種事業に係る消費税額×みなし仕入れ率70%
出典:国税庁 簡易課税制度
上記のように、簡便法を使えば納めるべき消費税額とみなし仕入れ率で簡単に仕入れ控除税額を求めることが可能です。ただし仕入金額が多い場合は、簡易課税制度を選ぶと損になってしまうケースも。一度簡易課税を選択すると最低でも2年間適用となるので、どちらの方が負担を軽減できるのかしっかり確認する必要があります。
簡易課税制度は事前に「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出が必要になりますので、利用する場合は早めに確認・対応しておいてください。
建設業界はインボイス以外の根本的な対策も必要
2023年からスタートするインボイス制度は、建設業界にも大きな影響を与える課題の一つです。発注側である工務店・受注側である一人親方、どちらの立場でも負担が増加は避けられないでしょう。
しかし少子高齢化が進むこれからの日本では、建設業も含めた多くの業界が厳しい状況となっていく可能性が高いです。少ない働き手で今のインフラや増加する高齢者を支えるためには、インボイス制度以上のさらなる増税が続くことも考えられます。
今後建設業界で生き残っていくためには、小手先の対策ではなく、根本的な改革を進めていく必要があります。インボイス制度は工務店・一人親方どちらにとっても厳しい状況ですが、前向きに良いきっかけと捉え、新しい時代への準備を進めましょう。例えばWEBやSNSなど新しい集客方法を活用して、自社のコンセプトや想いに共感する顧客を集められれば、業務効率や利益を向上させることも可能です。雇用を強化して人手不足を解消し、より高品質なサービスを提供することも大切です。需要の変化にしっかり対応し、十分な利益を確保して来るべき時代に備えていきましょう。
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