ウッドショックはいつまで続くのか|地域工務店が取るべき対応
工務店やハウスメーカーをはじめ住宅業界で今や聞かない日はない、「ウッドショック」問題。材料不足による着工遅延や木材価格の高騰などすでに国内でも大きな影響が出ており、頭を悩ませている経営者の方も多いと思います。
ウッドショックに対して多くの方が一番気にしているのは「いつまで続くのか」という点です。結論からお伝えすると、いつまで続くのか正確に予測するのは難しいため、長期スパンで対応を考えるべきです。
今回はウッドショックが発生した原因や背景、建築現場で発生している影響、政府の対応などを確認し、実際に工務店様が取るべき対応を考えてみましょう。
目次
■ウッドショックの原因と市場の動向
■ウッドショックによる工務店の影響
■ウッドショックに対する関係者の見通し
■ウッドショックはいつまで続くのか?
目次
■ウッドショックの原因と市場の動向
今後の対応を考える前に、まずはウッドショックが発生した原因と背景をしっかり把握しておきましょう。2021年5月14日の国土交通省赤羽大臣会見で、ウッドショックについての質疑応答があります。
住宅需要の増加
いわゆる「ウッドショック」と言われているような輸入木材の製品価格については、アメリカにおける住宅着工戸数の急増、中国の木材需要増大、また、世界的なコンテナ不足による運送コストの増大等により、高騰しているということで、国産材の代替需要が発生しており、国産材の製品価格も大変上昇しています。
引用元:国土交通省赤羽大臣会見要旨(https://www.mlit.go.jp/report/interview/daijin210514.html)
ここで述べられている「アメリカにおける住宅着工戸数の急増」「中国の木材需要増大」は、新型コロナウイルスの流行が原因です。アメリカではリモートワークの普及で郊外を中心に住宅需要が増加し、低金利政策も重なって材木が不足し始めました。
また中国は世界の針葉樹林輸入量の44%を占めており、いち早く経済活動を再開したことで世界の材木不足に拍車がかかりました。
参照:林野庁(中国における木材貿易の動向)https://www.rinya.maff.go.jp/j/boutai/yunyuu/attach/pdf/kakkoku_jyoho-3.pdf
輸入材の流通も滞っている
コロナウイルスによる巣ごもり需要によって世界の流通量が増加し、コンテナ不足と運賃の増加も引き起こしました。横浜⇔ロサンゼルス間の20フィートコンテナ運賃は2020年1月に1330ドルでしたが7月ごろから急騰し、2021年1月には約3.8倍の5100ドルに達しています。運賃の高騰は輸入材価格に反映され、ウッドショック加速の一因となっています。
参照:国土交通省(コンテナ不足問題に関する政府における取組)https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001403345.pdf
国産木材にも影響が波及
輸入材の高騰と不足により国産材への切り替え需要も発生しており、こちらもすでに価格の高騰と不足が見られています。
林野庁が発表した原木価格データによれば、2021年7月のスギ原木価格は前年比16~121%増、ヒノキ原木価格は31%~183%増と例年にない値動きを見せています。柱や垂木など製品価格も5~7月を境に軒並み上昇しており、国産材を扱う工務店も楽観視できない状況です。
参照:林野庁(令和3年7月 ⽊材需給動向について)https://www.rinya.maff.go.jp/j/mokusan/ryutsu/attach/pdf/kyougikai-162.pdf
■ウッドショックによる工務店の影響
世界的な材木不足は日本国内にも大きな影響を及ぼしています。特に輸入材に頼っている工務店やハウスメーカーでは影響が大きい傾向があり、材料価格の高騰や供給遅延など経営状況を直撃している会社も少なくありません。
データ参照:国土交通省(中小工務店における木材の供給遅延の影響について)https://www.mlit.go.jp/common/001414610.pdf
国土交通省が2021年6月25日から7月5日に中小工務店109社を対象に実施した調査によると、木材の供給遅延が生じている工務店は9割以上に上っています。工事の遅れも3割以上の工務店で発生していますが、新規契約の見送りが35%発生しているのはかなり影響が大きいポイントです。
この調査では建築価格について触れられていませんが、仕入れ価格が100万円前後高騰したという工務店も少なくないようです。大手ハウスメーカーも価格は公表していないものの、値上げに踏み切ったという情報が少なくありません。
こうした状況を受け、すでに資金繰りが厳しくなっている工務店も現れているようです。ウッドショックを機に資金繰りが厳しくなっていると回答した工務店は33%にも上っており、現在影響がなくても対岸の火事と楽観視はできない状況です。
■ウッドショックに対する政府の対応
住宅業界を管轄する国土交通省と木材産業に関わる林野庁のウッドショックへの対応も、今後の動向を知る上で不可欠な情報です。
・国土交通省の対応
前述した赤羽大臣の会見では、ウッドショックが中小工務店に与える影響が大きい点に触れ、国産材の利用促進などの対策を要請したことを述べています。
輸入木材と国産木材の需給バランスを取りつつ、住宅事業者による材料共同調達など長期的な視点での対応を進める方針のようです。林野庁と連携しつつ、林業・製材事業者との協定や契約も視野に入れているとのことです。
そのほか2021年7月時点では国交省からウッドショックに対しての公式発表はなく、即効性のある対策はまだない状況だといえるでしょう。
参照:国土交通省(赤羽大臣会見要旨)https://www.mlit.go.jp/report/interview/daijin210514.html
・林野庁の対応
赤羽大臣の会見に登場した林野庁では、令和3年度の「国産材の安定供給体制の構築に向けた需給情報連絡協議会」にてウッドショックについて触れられています。
生産・加工・流通に関わる幅広い有識者が参加して情報共有と意見交換が行われましたが、議事録をチェックしても具体的な対策・施策は見られませんでした。
国産材の増産については生産者の高齢化や人手不足、乾燥工程によるタイムラグなどの問題があり、すぐに対応できるものではないようです。国産木材の増産が完了したころには輸入材市場が落ち着き、供給超過による値崩れを懸念する声もあります、全体的には様子見をしつつ長期的な対策という方針のようで、林野庁についてもスピード感のある施策は期待できないようです。
参照:林野庁(令和3年度 第1回 国産材の安定供給体制の構築に向けた関東地区需給情報連絡協議会 議事録) https://www.rinya.maff.go.jp/j/mokusan/ryutsu/attach/pdf/kyougikai-160.pdf
■ウッドショックはいつまで続くのか?
ここまで分かった状況をまとめて、ウッドショックの今後の見通しと工務店が取るべき基本姿勢を考えてみましょう。
誰もウッドショックの発生を予想できなかったのと同じように、いつまで続くのか正確に予測するのは難しいことです。しかし2021年7月時点でウッドショックに対する政府の具体的な施策がないことを考えると、国内市場への影響はしばらく続くと見た方が良いでしょう。
ウッドショックの発生源であるアメリカでは木材価格が戻りつつあるという情報もありますが、コロナ前より高い水準で高止まりしています。コンテナ不足や船賃の高騰など他の原因もあるため、すぐに日本の流通量と価格が戻るとは考えにくいです。
こうした状況の中で、工務店の皆様が取るべき対策は主に2つです。
- ・ウッドショックがいつまで続いても良い体制を構築する
- ・材木市場動向を常にチェックする
今後状況が好転するか悪化するかは分かりませんから、常に最悪のケースを想定して動くべきです。仮に今影響が出ていない会社様も楽観視せず、仕入先の確保や経営への影響を試算しておくべきでしょう。契約済みの顧客への対応、新たな見込み客への対応も、全社的にしっかり構築・共有することが必要です。またさまざまな情報ソースにあたって、常に最新の情報や市場動向も欠かさずチェックしておいてください。
今回のコラムが、少しでも皆様のお役に立てば幸いです。住宅市場全体で一丸となり、激動の時代を乗り越えていきましょう。
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