WEBでも気を付けたい不動産広告のルール|実際の違反事例をチェック
賃貸・売買に関わらず不動産の広告には消費者を守るためのルールがありますが、ポータルサイトや自社ホームページにも適用されることはご存知でしょうか?InstagramやFacebookなどのSNS広告も同じ扱いですから、今まで以上に注意・確認すべき場所が増えている状況です。
掲載審査がない自社サイトやSNS広告の情報はうっかりルール違反してしまう可能性も高く、実際にWEBサイトでの広告違反事例も報告されています。
今回は改めて不動産広告のルールで注意すべきポイントを見直し、ペナルティを課されないように対策しましょう。実際に違反となった事例も紹介しますので、経営者の方やWEB担当の方はぜひ参考にしてください。
目次
■ペナルティが大きい不動産広告のルール
■WEBでも気を付けたい不動産広告のルール
■実際にあった不動産広告違反事例
目次
■ペナルティが大きい不動産広告のルール
不動産広告のルールを定めているのは宅地建物取引業法と景品表示法で、違反してしまうとペナルティを受ける可能性があります。
また、不動産業界の慣習やルールに特化した公正競争規約でも違約金のペナルティを設けています。
宅地建物取引業法 | 業務停止処分
宅建業免許取り消し 六か月以下の懲役または100万円以下の罰金 |
景品表示法(不当景品類および不当表示防止法) | 措置命令
指導措置 課徴金納付命令 |
不動産の表示に関する公正競争規約 | 50万円以下の違約金
500万円以下の違約金(警告無視や再違反の場合) |
意図的・偶発的にかかわらず、不動産広告のルールに違反してしまうと上記のようなペナルティを受ける可能性があるわけです。
宅建業免許取り消しや金額の罰金・違約金など経営に影響を及ぼす重い罰則もあるため、しっかりルールを把握して違反を防ぎましょう。
■WEBでも気を付けたい不動産広告のルール
表示基準
広告によって情報のばらつきがあると一般消費者が分かりにくいため、一定の基準が定められています。
取引態様 | 売主・貸主・媒介(仲介) |
物件の所在地 | 都道府県から番地まで |
交通利便性 | 鉄道・モノレールの駅やバス停 |
各施設までの距離と所要時間 | 徒歩による所要時間は、道路距離80メートルにつき1分間を要するものとして算出した数値を表示すること |
面積 | メートル法で表示し一平方メートル以下は切り捨て |
物件の形質 | 登記の地目や建築に使用された材料など |
写真や絵図 | 取引する物件の写真や図面 |
価格・賃料 | 土地一区画、建物一戸当たりの価格 |
生活関連施設 | 学校・病院・公園など |
設備・施設 | 上下水道、ガス種別など |
住宅ローン等 | 割賦販売条件など |
例えば最寄り駅まで実際に歩いて計った時間を記載すると違反になってしまうわけです。各項目の基準を一つずつ確認して記載しましょう。
広告開始時期の制限
土地や建物は開発の許可や建築確認を受けるまで広告を出すことができません。
物件の仕様が確定する前に広告を出すと、設計変更があったときに消費者が不利益を被る恐れがあるためです。
「建築確認申請中」などの表記をしても、許認可が下りる前に広告すると違反になってしまいます。
特定事項の明示義務
都市計画法や建築基準法などで土地や建物に制限がかけられていたり、物理的な欠陥があったりする物件は、その旨を表示しなければいけません。
例えば市街地調整区域の土地であれば、原則的に新築や建て替えができないことを伝えた上で、許可が下りるかどうかを表示する必要があります。
- ・再建築不可
- ・セットバック要
- ・高圧線下の物件
- ・傾斜地
- ・不整形地
- ・計画道路の区域内
ほかにも上記のような消費者にとって不利益となる可能性がある情報は、基本的に明示すべきだと覚えておきましょう。
特定用語の使用基準
基準があいまいな言葉やほかの不動産会社・物件と比較するような表現などは、内容を裏付ける根拠がなければ使用することができません。
- ・「完ぺき」「万全」などの完全表現
- ・「地域ナンバーワン」「日本初」「抜群」など優位性を強調する表現
- ・「特選」「厳選」など一定基準で選抜したことを意味する表現
- ・「最高」「特級」などの最上級表現
- ・「掘り出し物件」「格安」などの安さをアピールする表現
- ・「完売」など売れ行きを強調する表現
特に完全表現や最上級表現は根拠を明示するのは困難なため、基本的に避けるべきです。
絶対に倒壊しない家や100%不具合の無い中古住宅はありませんよね。他の表現も根拠となるデータを確実に明示できない場合広告違反となるため注意しましょう。
また新築・新発売など販売時期に関する用語や間取りの表現も基準を満たさないと使えません。
新築 | 建築後一年未満で誰も入居したことがない物件 |
新発売 | 新築や新しく造成した宅地で初めて申し込みの勧誘で、一定の期間内が対象 |
ダイニングキッチン(DK) | 台所と食堂が一部屋にまとまっていて、必要な広さがある間取りが対象 |
建築工事の完了 | 建物をすぐに使用開始できる状況 |
不当表示の禁止
実物より有利な条件に見せかけ消費者を誘引する不当表示も広告違反となります。
例えば居室と認められない納戸を一部屋としてカウントするのは不当表示に当たります。
3LDK+S(納戸)の物件を4LDKと表記すると広告違反となるわけです。仮に売り主の要望でこのような表記をした場合も、広告主である不動産会社が違反に問われるので注意しましょう。
- ・物件写真の電柱を画像ソフトで消した
- ・実物とは別の物件のイメージパースを掲載した
- ・おとり広告(実際に取引できない物件を掲載)
画像や図面の間違い、成約物件の消し忘れなども不当表示としてカウントされてしまう可能性があります。
物件と広告の差異がなく、消費者に有利な条件だと誤認させないようにすることが基本です。
二重価格表示
キャンペーンなどの値引きは二重価格表示に該当し、一定の要件を満たさないと広告違反になってしまいます。
- 旧販売価格の公表日と値下げ日を明示すること
- 旧価格は値下げより3か月前に公表されていること
- 値下げ日から6か月以内に表示すること
- 賃貸物件でないこと
例えば新旧価格の公表日を明記せず二重価格表示をすると違反になってしまうということですね。キャッシュバックなど見せかけの価格と実売価格が二重になるケースも該当するので注意しましょう。
■実際にあった不動産広告違反事例
上でご紹介した表示ルールに違反し、ペナルティが課されてしまった事例をいくつかピックアップしました。わかりやすく内容の一部を抜粋していますので、詳しい内容はリンク先の「首都圏不動産公正取引協議会」を参照ください。
おとり広告(2021年5月)
新宿区所在の広告主が、すでに契約済みとなっている物件をホームページ上に1か月半~1年以上掲載していたおとり広告の事例です。
また資料がなく取引できない中古マンションもホームページ上に掲載されていました。
いわゆる「おとり広告」に該当する違反となり、違約金のペナルティが課されました。
1 おとり広告
①契約済みとなり、取引できなくなったにもかかわらず、長いもので1年10か月以上、短いものでも1か月半継続して広告(3件)
②広告主は、広告時点において、中古マンションに関する資料を有しておらず、住戸を特定することができないことから、これら物件の取引不可(3件)
参照URL:公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会https://www.sfkoutori.or.jp/ihanjirei/1786/
表示基準の不備(2020年12月)
ホームページ上に掲載している賃貸物件について、住宅保険加入が必要な旨、情報登録日と更新予定日のなど不記載があり違反となった事例です。
表示基準の不備は意図的・過失に関わらず違反となってしまうので要注意です。このケースも違約金ペナルティとなっています。
3 住宅保険への加入を必要とする旨、情報登録日又は直前の更新日及び次回の更新予定日不記載(3件)
4 「取引態様 一般」 ⇒ 媒介である旨不記載(1件)参照URL:公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会https://www.sfkoutori.or.jp/ihanjirei/date/2020/12/
誇大広告(2020年11月)
一棟売りマンションのポータルサイト掲載で、空室に対する5年間の賃料保証という記載をしたが事実ではなかったという誇大広告の違反事例です。
ポータルサイトの掲載審査を通ったとしても、事実と異なる内容が合った場合不動産広告違反となります。
4 「本案件、賃料の見直しは無しで空室に対して5年間の保証で、初期想定賃料の80%を保証して頂けます!(サブリースではございません)」 ⇒ その事実はない(1件)
参照URL:公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会https://www.sfkoutori.or.jp/ihanjirei/date/2020/11/
■まとめ
不動産広告のルールはWEB上で消費者の目に触れる場所は基本的に適用されるため、知らないうちに違反となってしまう可能性もあります。
SNSや掲示板などインターネット経由の広告手法が増えている現代は特に違反に気を付けましょう。
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